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2006年2月21日 (火曜日)

新戦隊

日笠プロデュース+諸田パイロットという、すでにヲタ心に冷や水をぶっかけるような事前情報を得ていたわけだが、會川脚本というのはどうなんだろうという興味は辛うじてあった。同じスタッフの「仮面ライダー剣」は、オンドゥル滑舌と今井脚本の怒鳴り合いの相乗効果に耐えきれずに途中で視聴を止めてしまったが、どうやら人づてに聞くとストーリーラインだけは後半會川が盛り返したと聞いている。

近年の會川昇についてはあまりいい評判を聞かなかったのだが、剣の會川は特ヲタの間では評判が悪くないようだ。まあ、人間というのは変わるものだし、実際オレもそれほど會川作品を観ているわけではないので、ここはちょっと他人の評価を鵜呑みにして、期待してみようかと思った次第である。

ただまあ、今売りの特撮ニュータイプのインタビューを読むと、會川の會川たる所以というのか、オレイズム全開な辺りが激しく不安を醸し出す。

何より、會川が無駄に張り切って空回りしている印象が文面を通じてひしひしと伝わってくるのがもう…ボウケンジャーだから冒険してみよう、というのが甚だバクチくさい印象だ。ちょっとここに新味を入れてみようというのではなく、何から何まで「オレはこう思う」というオレイズムでアイディアを出している辺り、アカラサマにやりすぎ感が漂ってくる。

一方では、塚田戦隊は割合二本とも戦隊という枠組みの四隅をうまく使った優等生的な出来だったが、放任日笠+暴れ者會川のボウケンジャーは、どこかでそれを踏み外すんじゃないかというイロモノ的な期待もある。基本的に、スーパー戦隊というのは戦隊という看板さえ附けば戦隊になるのである。恐らく會川色に染め上げられた戦隊は激しく厨くさい空気を醸し出すだろうが、それもまた戦隊だ(笑)。

あとは、日笠戦隊には珍しいWヒロイン、それもSGの中村知世と末永遥というそこそこ知名度のある既存の人材で、さらに超ミニコスチュームというのはちょっと豪華だ。知世はまあ、SGのあとはグラビアさんで頑張っていたようなので、そこから戦隊へ来るのも近年の流れでは不自然ではないが、末永が来たのには正直意外な感を覚えた。

知世と比べても名を識られているしキャリアもあるから、女優をやるにせよ一般ドラマのほうへ行きたいだろうと思っていた。実際、去年の暮れにCXのヤングシナリオ大賞ドラマに主演していたのだから、二、三年前の水川あさみ辺りと同程度の知名度と視られているということだろう。水川に比べると役柄的にはちょっと落ちるが、フィルモグラフィーはそれなりのものだ。

あえてそこから戦隊をやって一年スケジュールを埋めるというのが、ちょっと売り出し戦略的にピンと来ない。戦隊はたしかに一年のスパンでズブの新人が顔を売るのには適しているが、逆にいうと一年間戦隊しかできないのだから、戦隊を観る層にしか顔を覚えてもらえない。さらに戦隊視聴層中の大人はお母さんがメインなのだから、今更末永がそういう層に顔を売っても拡がりがあるまい。

それに、たしかにU15というかチャイドルというか、微妙な時代にグラビア露出的な部分で話題になった人だから超ミニコスでもおかしくはないのだが、何というか、戦隊顔ではないようなイメージがあった。

少なくとも高寺以降の戦隊ヒロインというのは、派手なコスチュームが似合うもう少しわかりやすいハッキリした顔立ちのヒトが多かったので、末永遥のようなちょっと生々しい曖昧な顔立ちだと違和感があるのではないかという気がした。

それを逆にいうなら、柄に合わない女優がミニスカ衣装で特撮ヒロインを演じるのだから倒錯的な色気がないこともない。キャスティングの真意が腑に落ちないというだけの話で、否定的な見方をしているわけではないのである。クールなプロフェッショナルという役柄もこれまでの末永遥のイメージとは結び附かないだけに、かえって興味が持てそうだ。

男連中がどうにも見分けのつかない顔をした奴ら揃いなのは剣もそうだったが(笑)、設定を視る限りそれほどキャラの描き分けに困るとも思えない。何より、コスチュームの色が違うから制服着ている分には見分けがつくだろう(木亥火暴!!)。

というわけで、数々の不安要素を無理矢理ポジティブシンキングで乗り切って第一話を観たのだが、正直微妙な空気を感じたのは否めない。

ハッキリまずいなと思ったのは、これは大多数の特ヲタが感じたことだろうが、主人公側の過失で悪玉が復活するという筋書きはよろしくない。その後どんなにヒーローが活躍しても「どうせおまえらのせいじゃねぇか」的な後味の悪さを残してしまうからだ。新造人間キャシャーンの昔から言われ尽くされている定説なのだから、なぜ今になってあえてそれをやるのか理解できない。

ボウケンジャーチームの描き方自体は悪くない。黒が「オレは認めねぇぜ」タイプのライバルキャラというのは懐かしい感じだし、赤青桃既存メンバーと黒黄の新参メンバーの軋轢というプロットをメインにして、ついでに悪が復活する辺りの詰め込み感も戦隊第一話としてはこんなものだろう。むしろ呼吸をよくつかんでいるほうだと思う。

また、知世は予想どおりのイメージだが、末永遥が意外にアフレコが巧かったのは意外だった。どちらかといえば、知世が要らんことをむにゃむにゃ喋るエロキューションが演技的には自然でも、アフレコ的にはキツいんじゃないかという印象だ。

こういう芝居は顔出しだと自然に見えるが、面キャラ芝居だとちょっと浮いて見える。第一話はとくに前半で面キャラ芝居の割合が長かったので、知世のほうがちょっとぎこちない印象を覚えた。同じ「知世」でいうと、幻魔大戦の原田知世のアフレコを聞いたときに感じたようなぎこちなさというのか(笑)。

まあ、声質がアニメ声っぽいから、それなりに役者・視聴者が慣れてくればしっくりと感じられるのではないかと思う。

男連中は最初から芝居がそれなりの面子で固めているようで、大根で苦労した剣の反省が活きているのかもしれない。類型どおりのキャラだということもあって、さほど見分けの附かない印象でもない。赤のリーダーキャラを際立たせる作劇も上出来だし、役者の柄は未知数ながら、懐の深さをそれなりに感じられた。

不思議なのは、黒が面キャラ状態ではセリフ回しに不安がなかったのに、素面になるとちょっとオンドゥル入った感じになったことだ。気負い込むとオンドゥるというのは、去年の黄色に顕著な傾向だったから、その辺が少し不安ではある。

番組全体としては、事前の會川の発言から受けた印象とは違って新味のない古めかしい戦隊物という印象を覚えた。高寺以降塚田に至るまでの戦隊物はいろいろ実験的な試みを取り入れ、ゴレンジャー当時から観ているような者から視れば良くも悪しくも垢抜けた今時の特撮ヒーロー物というイメージだったが、その点ボウケンジャーは多少泥臭くて八〇年代臭が仄かに漂う。

主に赤黒のプロットが七〇年代のロボットアニメを思わせるような朴訥なテイストを帯びているからだと思うのだが、近年の戦隊メンバーはあまり暑苦しくぶつかり合わないので、こういう昔ながらの緊張感を持った関係というのも悪くはない。五人の中で派閥があって、互いに内心不信感を秘めているというのもちょっと戦隊としてはおもしろい設定だ。

悪い要素がそんなにないのに全体として微妙な空気を感じるのは、何か突き抜けたものがなかったからではないかと思う。今年の戦隊はこう来たか、というようなわかりやすい驚きに欠けるというのか、新戦隊を新戦隊とあらしめる芯になる独自のイメージを感じなかった。

この、最初にドカーンと来る手応えのなさは、ちょっとガオレンジャーの第一話と似ているように思う。冒険がテーマの宝探し戦隊というイメージはちゃんと出しているのだが、それがたとえばデカレンの刑事物、マジレンのハリポタ丸出しみたいにメインの作品イメージとして訴求してこない。わかりやすく目を惹く新機軸がない。なりふり構わず幼児にアピールするサービス精神がない。良くいえば渋い。悪くいえば地味。それでいて、妙にドラマが濃い。

なるほど、これは今までの戦隊とは違う。

會川の言によれば、にも関わらずこの番組は金がかかるということらしいが、その割に数字に結び附く部分で保険がないという印象である。実際、上層部が幼児受けの保険と視ている要素を反対を押し切って変えたようなことを言っているが、そこが戦隊という幼児番組の本義に照らしてどうなのか、それを変えることによって大人の視聴者が満足する要素に結び附くのか、この辺がどうにも微妙である。

肝心のオモチャの売上に結び附くメカデザインも、子どもにアピールする「はたらくじどうしゃ」で統一したというわけでもないし、ダンプ、ドーザー、フォーミュラなどと銘打っているが、あまりに原型を逸脱しすぎていてタイムで失敗した「純粋メカ路線」に限りなく近い。

合体した姿に見慣れたアイテムのモチーフが生えていないのもちょっとヤバイ。動物のアタマやパトライトや新幹線など馴染み深い具象的なアイテムが生えていたりするのがいちばん子どもにウケるデザインらしいのだが、ダイボウケンでいちばん具象的なアイテムはピッケルとスコップという、子どもにはちょっと馴染みのない山登りセットなのである。

普通に考えれば、ちょっと数字がとれる雰囲気ではない。かなりヤバイ。

これで数字が良かったらかなり大逆転ホームランなのだが、まあオレ個人の評価軸では視聴率などどうでもよいので、それはオレが心配することではないだろう。どちらかというと、奇跡かまぐれか、たまたま時代の歯車がかみ合ったかして、案外の好評だったりすると野次馬的におもしろいというふうに思う。

ただ、オレ自身の興味としてどうかというのがイマイチ決まらない。ドラマの濃さには好感を持ったものの、独自イメージの希薄さには何か今一つ入り込めないものを感じるのである。これが話数が進むにしたがって変わってくるのかは、もう少し様子を見てみないとわからない。

あと、スーパーヒーロータイムの両方の番組の主人公が「越えるべき壁」としての完成されたキャラクターだというのは単なる偶然だろうと思うが、同日の放映で両方の番組で「いつかおまえを越えてやる」というセリフを聞くのも、妙なシンクロニシティではあるな。

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