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2006年3月26日 (日曜日)

魔弾戦記リュウケンドー 第12話

キョウタ、三味線弾いてやがるな。

まあ、昔の不良監督ぶりを考えれば、今回ローテの演出も一応番組のテイストに沿ったものではあるし、そもそもそのテイストというのが普通の意味ではぶっ壊れたものなのだから、川崎ローテだけ突出して弾けたノリには感じられない。

というか、清水演出の広井王子セルフパロディのアレに直結してこのローテの二話がくるのでは、真面目に「ドラマ」なんてやってらんねーというのが正直なところだろう。

どうもこの番組に関しては、シリーズ構成の武上センセイもかなり三味線を弾いている節がある。郷里の許嫁に遠く離れたあけぼの町で頑張ってる姿を見せたその直後、主人公が自身の性格面の欠点を見つめ直すエピソードを持ってくるというのは、どういう底意があるのだろう。

七〇年代の青春ドラマ的に解釈するなら、上京してきた田舎の知音にいいとこ見せてはみたものの、そんな一時の踏ん張りで根底から人間が変わるというものでもなし、結局等身大のオレってダメな奴なんだよなぁ的な呼吸という取り方もできなくはない。

しかし、この番組についていえば、剣二が魔法頼りで戦っていただけで己自身の成長に目の届かない奴という描き方はこれまで一度もなかったと思うのだがどうだろう。田舎の許嫁にいいとこ見せるという定番の描き方にしても、リュウケンドーとしての活躍は十分評価に値するのに、一般人である許嫁にそれを明かすことはできないという約束事の縛りがネックになっていただけである。

「いいとこ見せる」という言い方が同じなだけで、課題の設定としては「ホントはちゃんとしてないのに体裁を繕う」のではなく、「ちゃんとやってるところを見せるわけにはいかない」という状況のはずである。

前者ならたとえば、東京でうだつの上がらない暮らしをしているダメ人間が、周囲の協力を得て身の丈以上に良い格好をしてみせるというパターンのドタバタになるのだし、後者の場合はたとえば、本来やるべき時にはちゃんとやっているのにそれ以外の冴えない日常を目の当たりにした郷里の縁者が憤慨して「田舎に連れ戻す」云々というパターンのドタバタになる。

前者のパターンのドタバタなら、良い格好して郷里の縁者に吹いた駄法螺の尻ぬぐいで周囲があたふたと右往左往した結果、田舎の縁者が「嘘だというのは最初からわかっていましたよ、良い仲間に恵まれてあなたは幸せですね」というオチになるのだし、後者のパターンなら、厳格な郷里の縁者が現在の暮らしぶりに徹底的にダメを出し、あわや連れ戻されるというタイミングで、視聴者が識っているような役柄の美点が開示され、それに感動した縁者が「おまえはもう大丈夫だ、成長したな」的な満足を得て帰郷するというオチになる。

その意味では、第10話の作劇はまるっきり後者のパターンそのものであって、何もおかしな点などない。この番組において、ベタベタのパターン作劇を忌避しなければならない理由など何もないからだ。ところが、第11話から続く二話に関していえば、せっかく田舎の縁者が感得した「成長」を、「魔法に頼っていただけ」「本人自身はいっさい成長していない」と真っ向から否定する話になっている。

何じゃそら、というのは誰でも思うところで、ホントにシリーズ構成が働いているならこういう繋がりにはならないはずだ。こういうエピソードを繋げていいのは、前者の駄法螺の尻ぬぐいパターンのドタバタのほうであり、良い仲間に囲まれているからといって本人が成長しているわけではないというのは当たり前のことだ。そこからダメ人間が自身の性格的な弱点を見つめ直し、仲間から受けた良い影響の下で本当に成長するという段取りなら納得がいく。

要するに、シリーズ構成の段取りが間違っているのである。今回ローテで、最初は発奮してベタベタな修行を始めた剣二が挫折してダメダメに落ち込む、そこから立ち直って成長する「かのような」お話になっているのは、前者の駄法螺パターンの直後にくれば十分納得がいく。たいがいその手の作劇だと、「田舎の縁者に認められて調子附く→何か困難が起こる→一気にヘタレを露呈→やっぱりオレはダメ人間→周りの励まし→立ち直って成長」というパターンが続くからで、今回のエピソードはおおむねそのパターンの一種と視ていいからである。

周りの励ましという意味では、今回のエピソードでは剣二は終始一貫周囲からほっとかれてはいるが、独力での戦いに敗北して挫折した剣二が、ただの非力な人間でありながら命がけで奮闘する街の人々の姿を目の当たりにして立ち直るという筋立ては、明らかに「良い仲間に恵まれて幸せですね」パターンから引き出される流れである。

今回ローテの二話の大筋に違和感を感じるのは、要するに、似たような二つのパターンをごっちゃにして間違った段取りを附けてしまったからなのだ。作劇の「てにをは」が間違っているために「周囲の励ましで立ち直る」という落とし所にストレートに繋がらず、「自分のために戦っていた」というワケのわからないオマケが附いてくる。

だいたい剣二が魔法に頼って自己の鍛錬を怠るような人物であるという描写はこれまでまったく視られなかった要素であって、たしかにいい加減だったり勢い任せだったり汗くさいことは嫌いだったりするが、それなりに不動のオッサンとは別種の底力を持っている人物として描かれてきたはずだ。

それなのに、今回ローテの描き方では何の取り柄もないダメ人間にしか見えない。何の取り柄もないダメ人間が主人公であることそれ自体が問題なのではない。そういう描き方をされてこなかったのに、今回いきなりお話の都合だけでダメ人間になったことが問題なのである。

また、ストーリーの芯になる剣二とジャークムーンの関係もワケのわからないもので、剣二がジャークムーンをライバル視していることが問題なのか、ジャークムーンが剣二をライバル視していることが問題なのかサッパリわからない。ジャークムーンとの勝負に拘ることが間違っているという落とし所にしたかったようだが、それをジャークムーンが剣二にサンダーキーを渡したことが卑怯だから、あんな奴をライバルと視ていたのは間違っていたというオチにしているのは、あまりにも苦しい。

普通、敵との一対一の真剣勝負に拘ることが間違っているという筋道を語るなら、主人公が何のために戦っているのか、そこを掘り下げるのがセオリーだろう。それがたとえば仲間を護るためであったりすれば、剣二が敵との勝負に拘ったことで大切な仲間が痍附いてしまうというような、敵を倒すことより仲間を護ることのほうが優先されるようなシチュエーションを設け、主人公が高次の目的意識に目覚めるようなストーリーを組むべきだ。

それが今回のお話では、敵がライバル視するに値しない相手だから間違っていたという話になっていて、じゃあライバルとして適当な敵が新たに出現したらまた同じことを繰り返すのか、という話になってしまう。

それならそれでジャークムーンをもっとアカラサマに卑怯な奴に描いてもよかったはずだが、サンダーキーを渡したジャークムーンの言い分を卑怯という言葉で切って捨てるのは妙な話である。並の力で適わないなら一か八かこれを使ってみろと言ったのだし、その危険性は瀬戸山がちゃんと指摘している。人の言うことを聞かずに失敗したのは、剣二個人の力不足の責任である。

しかも、再度サンダーキーを使う場面と最初に使った場面との意味の違いが明確な対照をなしていないため、「なんだ結局サンダーキー使って勝負するんじゃん」的な見え方になってしまう。

一対一の勝負に拘ることと魔法の力に頼って自身の修練を怠っていたことは本来まったく別の問題のはずであり、場合によっては相互に矛盾すら生じるだろう。普通なら別々の話で扱うべき事柄である。剣二が挫折を経験するに至るまでの筋道も無理矢理なら、そこから立ち直る筋道も無理矢理で、いろいろなことを混同して散漫に考えているために、何が言いたい話なのか一本筋が通っていない。

つまり、百歩譲ってダメ人間の剣二が挫折を経験して成長する話を是としたとしても、その立ち直りの物語としてすら作劇が間違っているということだ。

案の定、じっさいの映像を視ると、剣二の立ち直りからジャークムーンとの再戦に至る流れは物凄くアッサリ流されている。最低限の辻褄を合わせるために剣二の独白の場面に周囲の人々の姿を重ね合わせてはいるが、ジャークムーンとの再戦の内容が具体的にどうであったのかは端折って描かれている。何というか、何とか辻褄を合わせようと悪戦苦闘した挙げ句、「附き合いきれない」とガックリ頭を垂れた演出家の溜息が聞こえてくるようですらある(笑)。

オレの認識では、武上純希というライターは気の抜けたホンは書いてもベテランなりのセオリーとノウハウは具えている人だと思っていたのだが、どうも最近はそんな最低限の評価すらも撤回しなければならないようだ。発端となる第11話は別のライターが書いているから、一種武上が落とし所を用意してまとめたかたちになるのだろうが、シリーズ構成者としての責任は措くとしても、ホン書きとしてまとめ方にノウハウが感じられない。

つか、リュウケンドーでこんなことを真面目に考えてしまったオレってバカなんじゃないだろうかとすらちょっと思った(笑)。

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