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2007年4月 4日 (水曜日)

文系TV局驚異の科学力

笑い事では全然ないのだが、関テレの社長って「千草宗一郎」なんて面白い名前だったのか。たしかに惣一郎さんが千草の家に婿入りしていたら、あれほどややこしい話にはならなかったのかもしれないねぇ と、前回のエントリーを書いた直後だけに、本筋とはまったく無関係な感慨に浸ってしまったぢゃないか(笑)。

数日前に「検証番組」と称して問題の「発掘あるある大事典」の捏造部分を編集した映像を延々流し続け、全国ネットの土俵では誰も識らないような局アナが謝罪するのみに留まった関テレの姿勢には、「ピントのズレた局だなぁ」という冷淡な関心しか覚えなかったのだが、流石に今回の検証番組では経営トップの謝罪をド頭に据え、捏造に至った局内事情を詳細に追っていて、それなりに本気度が伝わってきた。

一応これで「捏造個所の詳細開示」と「捏造経緯の詳細開示」がセットで提示された形になったわけで、それに対する具体的改善策も提示されているわけだから、何とか襟を正して反省の姿勢を示すことが出来たと言えるだろう。前回の一五分前後の特番を視た時点では、「そんな他のメディアでも報道しているような内容を今更なぞってもしゃあないだろう」「視聴者が識りたいのは『どこで何故そのようなことが起こったか』だろうに」と思ったのだが、それには一応答えが得られたわけである。

まあ、その経緯や理由自体も他のメディアですでに報じられている内容に過ぎないとは言えるだろうが、各階層の当事者にインタビューして局面毎の具体的な心情動機を刻銘に暴き立て、調査委からの「当事者意識の不在」という批判意見を掲げ経営トップが顔出しで頭を下げて辞任している以上は、これ以上に全社体制の引責姿勢を見せることは出来ないだろうとは思う。

まあ、全社的危機から僅か一年で同じようなドジを踏んで左前になったTBSの例もあるので、だからと言って今後関テレの制作姿勢が改善される保証など何もないわけだから、今後も同局の制作番組を厳しい目で視ていく必要はあるのだろうが、関係者の証言で更めて今回の問題に至った根本原因が理解出来たということは言える。

要するに関テレは、あるあるに関しては一〇年来に亘って厳しい科学的批判が多数寄せられていることは承知していたが、そんな外部の声を歯牙にもかけずに、優良コンテンツとして自信を持って継続制作していたということである。当たり前のように聞こえるが、「私たちは何を間違えたのか」と言うなら、それを間違えたと答えるしかない。

そもそもダイエットや健康問題を取り扱う番組であるのなら、白インゲンの例を視るまでもなく下手を打てば視聴者に健康被害が出るのが当たり前である。というか、誰一人健康被害が出ないようなダイエット法や健康法に、目立った効用などあるわけがない。その時点ですでに「○○『だけ』で『見る見る』痩せる!」とアオリを打ったTV番組の信頼性など皆無である。

ダイエット法や健康法が効くということは、当たり前なら喰った分だけ肥るのだし肥りすぎれば不健康になるように出来ている人間の天然の生理に逆らって、節食や運動という当たり前の対処法に頼らず痩身や健康改善という成果が得られるということである。この場合、健康改善というのは気の持ちようの部分もあるから一概には言えないが、ダイエット法に関しては実はかなりヤバいテーマであることは間違いない。

もしそれが効くなら、それは人間の肉体に対してかなり強力な影響を及ぼしているということなのだから、マジョリティにとって「効く」ダイエット法は特定のマイノリティにとっては命取りに危険なものである可能性が少なくないはずである。「効く」ということはそういうことでしかないからである。

要するに「良い」影響とか「悪い」影響というのは人間視点の恣意的な基準に過ぎないのだから、天然自然の「善玉」も「悪玉」もない。人体に対して「良い」影響だけを与える食品や化学的有効成分などは存在しないし、人体に対して一定以上の影響を与える食品を薬と呼ぶのだし、薬というのは「常に」毒と同じものである。つまり、ダイエットに「効く」と銘打った食品は本質的に薬としての側面があるはずだし、薬である以上リスクがあるのが当然であり、それは量の関数の問題になるはずである。

だとすれば、「効く」と銘打ったダイエット法を公共放送で紹介することそれ自体が公器としての概念矛盾なのである。

例の白インゲンが「効く」のか何うかは識らないし、あの場合は単に調理法に若干難しい面があったという事情だから少し話は違うが、本当に「効く」方法を紹介するのであれば、あの種のトラブルとは縁が切れなくて当たり前のはずなのである。

オレの識る限りではあるあるで紹介されたダイエット法で実際に効能があるのは「にがりダイエット」だけで、何故「にがり」が効くのかと言えば、塩化マグネシウムの過剰摂取には明確な健康被害があるからであり、病的状態になるからその結果として痩せる可能性があるということである。まあ、だったら普通に下剤でも服んだほうがマシというレベルの話ではあるし、塩化マグネシウムのような軽金属を過剰摂取するリスクは痩せるメリットに比べて格段に大きなものであるから、絶対にお奨めしない。

しかしまあ、「にがり」や白インゲンによる健康被害が大問題となったように、公共放送で紹介した情報が原因で視聴者に健康被害が出た場合には大きな責任問題に発展するわけだから、まるっと纏めて言えば、TVで紹介しているような健康被害の出ない「安全な」ダイエット法には、殆ど目立った効用はないということになる。

つまり、視聴者の健康被害を回避すべき義務を負うTV番組で「○○『だけ』で『見る見る』痩せる!」などとアオリを打っているということは、それだけですでに欺瞞なのである。ほっとけば肥るように出来ている人間の体が「見る見る」痩せるというのは、本来相当ヤバいことが体内で起こっていないとおかしいからである。

何を喰っても健康に痩せるという夢のようなおクスリが厚生労働省から認可されない限り、いやまあ現状の厚労省ではそのお墨付きすらも盲信することは出来ないが、普通に喰って健康に痩せるなどという夢物語は存在しないと視たほうがいいだろう。

それが、そんな夢みたいなことがあるんですのよ奥様

というのは、典型的な詐欺師の常套句である。

内容を子細に検討するまでもなく、捏造があったかなかったとも無関係に、その根本姿勢がすでに科学的に間違っている、胡散臭い、という声は番組スタート時点から根強くあったのだし、逐次的に内容を批判したサイトや検証本も多数公開されているにも関わらず、関テレはそんな外部の声や検証の労に一切耳を籍さなかったということになる。

関テレ上層部に科学的知識があったかなかったということはそれほど問題ではないはずで、一般的なTVマンレベルの高等教育を受けていれば、非科学的な「善玉」「ドロドロ」というどぎつい表現手法に頼る番組よりも、理路と根拠を明確にした批判意見のほうに視るべきところがあることは判断可能である。

誰一人として健康被害が出ず安全で楽で必ず「効く」ダイエット法や健康法を紹介する番組が一〇年保つというのは、それだけで不自然である。非常に生臭いことを言うのであれば、この種の欺瞞的な扇情性で数字を稼ぐのは精々一年か二年が好い塩梅のところで、大して効きもしないダイエット法を「見る見る痩せる!」と煽って数字を稼ぐのもその程度なら、好ましからぬ視聴率至上主義として顰蹙を買っても「多寡がTV屋」的な冷笑と共に大勢としては黙過された可能性もある。

実際、根強い批判を受けながらもこの番組が終了するまでに一〇年もの年月がかかっているわけで、それも批判それ自体が理由ではなく捏造追及という外因的な事情の故に不本意ながら打ち切りに追い込まれたことを視ても、あるあるIの段階で止めておけばここまで大事になることはなかっただろう。下品な色物商売には引け時というものがあるということである。

それがTVマンの公器に携わる者としてのプライドと何ういう関係になるのかなど、当事者が考えれば好いことである。単にそういう下品な数字の稼ぎ方をすれば世間から見下されるという当たり前の話であって、見下されても好いから数字が欲しいというのであればどうぞご勝手になさるが好いということだ。こういう番組を堂々とつくる以上は遠慮会釈なくオレは「多寡がTV屋」と蔑むし、オレやその辺の視聴者が蔑もうが何だろうが意に介することもなく数字を取りに行ったからこういう下品な番組を一〇年も続けて愧るところがなかったという話である。

そして、この種の下品な番組は何もあるある大事典だけに限ったことではないし、バラエティ番組というものはそういう「多寡が」「されど」の呼吸でつくられるものだというニヒルな見方もあるだろう。ならば、あるある大事典のどこが決定的に拙かったのかという生臭い話をするなら、引け時を見失ったということに尽きるだろう。

捏造という退っ引きならないルール違反が顕在化するまで、この番組を終了させるつもりがなかったということなのだから、捏造さえ発覚していなければもっと続けるつもりだったということだろう。つまり、情報バラエティとして欺瞞的であるかないかは問題ではなく、他人が指摘し得るような明確なルール違反があったかなかったか、それがバレるかバレないかが問題だということである。

だとすれば、他人が指摘し得るような明確なルール違反が起こりそれがバレるまで番組を継続制作するつもりだったということなのだから、番組が「終わる」際に今回のような大問題に発展するのは当たり前の話だということである。

「何を間違えたのか」も糞もなく、最初から全部間違っていたのである。

そして、捏造というのは「あってはならないこと」ではあるが、その半面「容易に起こり得ること」でもある。ちょっとググっていただくかウィキで調べていただけばわかることだが、在京キー局で捏造・ヤラセ事件からクリーンな局は実に一局も存在しない。それは天下のNHKとて例外ではなく、「ほぼ」ではなく「すべて」のキー局が一度は捏造・ヤラセ事件で手を汚しているのである。

局サイドが制作現場をぎゅうぎゅう絞れば容易に捏造・ヤラセは発生するのだし、あるある大事典のようなネタ元が生命線の番組を一〇年も続ければいずれネタ切れ→捏造に発展するのは当たり前の話である。

だから、理念面を措いて現実論を言うならば、ただ単に内容面の非科学性や公器としての姿勢に批判を受けているに過ぎない段階で、さっさと勝ち逃げすれば好かったというそれだけの話なのである。

逆説的に言うなら、理念面を重要視する視聴者にとっては、あるある大事典が辿るべくしてこのような道筋を辿り、関テレ全体のクライシスとして跳ね返ってきたことは理非を論じる絶好の機会でもある。都合好く数字を稼ぐだけ稼いで惜しまれつつ勝ち逃げされてしまっていたら、この種の欺瞞的情報バラエティの問題点を論じる機会は喪われてしまうだろう。その意味で、関テレが欲をかいて下手を打ってくれたことは勿怪の幸いとさえ言えるかもしれない。

オレ個人の感情面で言っても、あるあるにかぶれて胡散臭い健康法やダイエット法に手を出す人間が「騙されていたのか」と気附く機会が出来ただけ有り難い話である。幾ら口を酸っぱくして「あれ出鱈目だから」と言ってみても、そういう人は大概切実な動機を抱えていたりするので「やってみても損はないだろう」という反応が返ってくる。

それが友人や家族なら「莫迦だなぁ」とからかったりもするけれど、本当はからかっていいことでも何でもない。オレは単に調べ癖が附いているし、仕事柄長々とした小理屈を読むのもさして苦にならないから、批判サイトや検証本の内容も目にしているが、普通一般の生活人が、TV番組で自信たっぷりに断言されたことをある程度信用するのは当たり前の人情だし、それ以前に痩せたくても痩せられない、でも痩せたいという泣き所があるから誰もがこういう番組に一縷の望みを託すのである。

そういう人情を嗤うということは、たとえば江原啓之の番組で江原の講釈に涙を流して感謝しているような人々を嗤うのと同じことだろう。人間なんてそれほど賢い生き物ではないのだし、正確な事実を識るよりも今この場における人情の問題を解決するほうが大切な局面など幾らでもあるのである。

たとえば市販の風邪薬がそれほど劇的に効かないように、安全性を考えるならある程度効能が犠牲になるというのは基本的な原則だが、買い薬で満足して風邪が治る場合だって幾らもあるのだから、別段TV番組で大して効きもしないダイエット法を紹介する分にはそれほど大きな罪ではない。

「効果は人によって違います」というのは便利な逃げ口上だが、それは逆に言えばその程度の方法でもちゃんと痩せる人は多少いるということだろう。他に害がないのであれば、その少数の成功者にとってそのダイエット法は有意義だったということであり、他の人に効果がなかったのは運が悪かったからという言い方も出来るのである。命に関わるほど肥っている人なら、ダイエット法ではなく医者の指示に遵って医療的に減量すべきなのだから、まあダイエットというのはその程度の距離感の事柄ではあるだろう。

だから、下世話な言い方をするなら、あるある大事典の最大の問題点は、しょーもないダイエット法を紹介して数字を稼いだことそれ自体ではなく、視聴者の人情に附け込んだあれを喰えだのこれを喰うなだのと言う指図がましい商売を「科学的データが証明」的な胡散臭い手法で一〇年も続けられると思ったのが厚かましいということに尽きるだろう。「科学的な手法」を前面に謳うから科学的に検証批判されてしまうのだし、科学一般の反啓蒙という負の広報効果が生じるから問題視されるのである。

普通一般の生活情報バラエティで他愛のない健康体操やダイエットマメ知識を紹介する分には罪のないおばあちゃんの知恵袋(効く効かないが曖昧ということも含めて)と言えるだろうが、この分野の権威であるかのように「必ず痩せる!」的に煽る番組を似非科学の意匠で正当化して、続けられるだけ続けようとする姿勢が厚かましいのである。

もう一度最初から問題を整理するなら、データやコメントの捏造というのは明らかな虚偽情報である。だがそれ以前に、原理的に言ってそれほど効果の期待出来ない方法を紹介して「必ず痩せる!」「○○を食べるだけで見る見る痩せる!」「それにはこのような科学的理論と根拠がある」と煽ることもまた(捏造云々以前に科学的識見の検証・開示の手続が間違っているから)、程度こそ違えど虚偽情報であることは間違いない。

虚偽情報ということでいえば、前者も後者も「意図的な嘘」であることには違いないのである。

健康法やダイエット法自体は言ったモン勝ちの分野であるし、害のない方法でやる分には当事者の自己責任であり、それを当たらず触らずの距離感で紹介するのなら視聴者の情報ニーズに応じただけという言い方も出来るだろう。しかし、この番組の表現上の問題点は、科学的な意匠を訴求手段として用いて「必ず効く」と強弁している部分で、その意匠が科学的観点では窮めてルーズなものでしかないことが問題なのである。

「科学的データが証明」的な表現をされた場合、普通一般の科学的素養のないお茶の間の視聴者には反証手段がない。理系の学問を専修的に修めた人間には、内容云々以前にそもそも検証・開示の手続自体が出鱈目なことに気附くが、それをそのような訓練を積んでいない視聴者に見抜けというほうに無理がある。そのような視聴者にとっては、詳しいことがわからないからこそ説得力があるのである。

たとえば「βカロテンが体にいい」とか「DHEAが体にいい」というレベルの紹介ならともかく、一般的に定説と見做されていない新説・珍説の類を「科学的に」開示するという遣り方にはかなり問題があるだろう。散々ツッコミを入れられているあるある大実験のn数の貧弱さは、すでに定説と見做されている内容を「じゃあ、実際にやってみましょう」と体験的に表現するという意味においてのみ意義を持つもので、科学的検証手段でも何でもない。

つまり「実験」の意味にズレがあるわけで、下世話に「理科の実験」という場合のような意味での「実験」に過ぎない行為(つまりそうなることがわかりきっていることを実際に体験させるだけのパフォーマンス)を「臨床実験」的なニュアンスで表現している辺りが確信犯の詐術なのである。これは「そういう意味で言ったんじゃありません」と言い抜けが効く「紛らわしい表現」「誤解を招く表現」というやつで、そういうふうに誤解するやつが悪いんだ的な発想である。

そして、他の番組ではそこまで踏み込んで詐術的な科学的意匠を前面に出していないことがこの番組のアドバンテージとなり、「あるあるの情報は説得力があってわかりやすい」という印象を与えるわけで、本来捏造など行わなくてもこの遣り方なら何とでも言い繕うことが可能なのである。

おそらく視聴者がこの番組を歓迎したのは、その種の一見「科学的な」もっともらしさを「善玉コレステロール」とか「ドロドロ血」というような感覚的にわかりやすいタームとビジュアルで表現している部分が魅力だったからだろう。「素人にはわからないような難しい理屈」を「わかりやすく表現」しているという部分に説得力とわかりやすさを同時に感じていたことが、この番組のヒットの要因だったのだろう。

そのヒット要因、つまり「難しい理屈の説得力」と「わかりやすい表現」の狭間に一般的視聴者に訴求しづらい恣意的な嘘の入り込む余地があったことがこの番組の最大の問題点だったわけで、ヒット要因が丸ごと問題点だったという言い方が出来るだろう。

今回の検証番組を視ると、何故に捏造が行われたのかがかなりわかりやすく開示されていたのだが、最初は「効能を強調する表現上の必要性からの捏造」だったのが、納豆の件では「効能を解説するストーリーが成立しなかった為の捏造」にまでエスカレートしたということである。

要するに、納豆で痩せるなどという整合的なストーリーは何処にも転がっていなかったということである。本来科学の分野では、その仮説が整合的なストーリーを描いているかどうかとういうのは最低要件に過ぎないわけで、幾ら美しいストーリーが成立しても実験結果がそれを裏切ったらその仮説には妥当性がないわけだが、納豆の件では仮説すら成立しないほどに根も葉もない話だったということである。

たとえば以前の捏造は、「このデータでは弱いからちょっと水増ししよう」「この先生のご意見は不都合だからちょっと編集しよう」「このガイジンの発言を都合のいいようにニュアンスを変えて翻訳して吹き替えよう」「この件とは無関係だが効果的な絵を挿入しよう」というような動機だったのかもしれないし、大筋のストーリー自体は成立しているがそれに実験的なデータの裏付けがとれなかった、あるいは説得力が弱いというレベルだったのだろう。それだって信頼性の薄い仮説の信憑性を水増しする明確な捏造であることには間違いないのだから、弁解の余地のないことではある。

しかし、納豆の回ではそもそも目串を差した仮説自体が整合しないということになってしまい、その線ですでに制作費を遣っているから、このラインを放棄するとそれが丸々損益になってしまうということだったようである。取材の結果整合しないことが判明してもすでに取材費が発生しているから損益にはしたくない、だから仮説が整合するように科学的検証部分のほぼ全体を捏造するという形にエスカレートした。これが納豆事件の真相だったようである。

要するに、最初から最後まで全部嘘だったわけである。

そもそもβーコングリシニンにダイエット効果があるという研究自体はあったようなのだが、それこそ世の中にはどんな研究だってあるのだし、検証番組でもその研究が実証されているか何うかには言及していない。

たとえばチューインガムの業界団体がもっとガムを売りたいと考えた場合、ガムを噛むことでカラダにいい効果はないかという目的で研究を助成するだろうから、「ガムを噛むとカラダにいい」という研究テーマ自体には幾らでも存在の余地はあるが、研究が行われていることと、実際にガムを噛むとカラダにいいかどうかとはまた別の話である。それを確かめる為に研究するのであって、研究があるからそのような事実があると考えるほうが間違っている。

インターネットや学術誌で情報収集していたそうだが、たしかに学術誌に論文を乗せるのは大変なことだが、学術誌に掲載されたからと言っても、どんな内容が論じられているのかが問題であって、研究テーマがガチンコで実証されました、これが定説ですよという論文だけが掲載されているわけではない。インターネットに至っては、それきり続報の出ないゴミ研究だって幾らでも紹介されている。

βーコングリシニンに関しては何うかは識らないが、取材拒否されている以上、まあ普通によくある筋の良くない研究だったんでねーの?という外はない。ところが、最初に当該物質が含まれている食品として納豆を挙げて企画を進めてしまった為「納豆で痩せる」という筋書きそれ自体が独り歩きして目的化してしまった。

そこで、納豆を喰って痩せるという既存のストーリーを成立させる為にディレクターが科学的な仮説を立てたというのが驚いてしまう。結果的には最初のβーコングリシニンの線と同様に、この仮説も死に筋になってしまったわけだが、強引にこの「納豆で痩せる」というストーリーに則った番組を制作してしまった為に捏造が必要となったということである。

それこそ科学の分野では素人の制作会社のディレクターが「仮説」を立てるということ自体が驚きで、ならばこれまでこの番組で紹介されてきた「驚異の○○パワー」という類の内容は、素人が立てた仮説に基づいてそれが整合するように整形された情報だったのかという驚きを覚えた。

幾ら何でも巷に幾らでも転がっている「○○健康法」「○○ダイエット法」という類のアリモノを紹介しているのだろうと思っていたのだが、番組が制作されるまでこの世に存在しなかった情報であることが判明して軽く衝撃を覚えたことは事実である。たしかに「あるある独自の調査」「ここでわれわれはある仮説を立てた」的な文言は番組内でも氾濫していたが、それこそ単なるショーアップの為のハッタリだろうと思っていたので、最初の最初から現場の思い附きの企画だったというのは結構な衝撃である。

正直言ってオレはこの番組の熱心な視聴者ではなく、レオタードのお姉さんの実演映像がないとまず観ないので、今回の検証番組を観るまで、あるある大事典というのは既存の健康法やダイエット法をわかりやすくアレンジして紹介する番組だとばかり思い込んでいた。そして「番組独自の仮説」というのは、そのような既存の手法を紹介する為の演出的な方便だろうとばかり思い込んでいた。何故なら、本当にそれが「番組独自の仮説」なのだとしたら情報バラエティの作り方として狂気の沙汰だからである。

たとえばこれこれの食品をこれこれの分量これこれの頻度で摂れば痩せるなどと異様に具体的な形で紹介しているのだから、「長年の研究の結果、このような方式を編み出しました」と言い張っている何処かの健康教教祖の説をTV局が紹介する、という形にするのが一番無難な制作手法だろう。

何か拙いことがあって調査委が入った場合にも「いや、われわれは実はこのような健康法を提唱している○○氏の説を紹介しただけです」「充分に調査しなかったことはわれわれの手落ちですし、その紹介の仕方に行きすぎがあったことは認めます」という形でちょっと謝って八方丸く収めることが可能だからである。

そういう意味で、オレも長閑に「よくまあそんな方法を思い附く教祖様の種が尽きないもんだなぁ」と感心していたのだが、尽きないのも道理で制作現場が素人の思い附きの企画を元に打ち合わせと取材で決めていたのである。

つまり、視聴者に対してどういうニュアンスで提示しているかはともかく、実質的に言えば「あるある大実験」というのは嘘も隠しもない実態的な意味の「実験」だったわけで、あれ以外のデータなどこの世に存在しないわけである。

検証番組を視る限りでは、その「仮説」の「部品」となる知見についてはそれなりに取材して裏を取っていたようだが、たとえば「納豆を喰って痩せる」という番組テーマそれ自体に関しては、あれしかデータが存在しないというわけである。つまりこの人たちは、そんな恣意的な手法で継ぎ接ぎされた仮説に「科学的妥当性がある」「裏は取れている」と本気で思っていましたと言い張っているわけである。

開いた口が塞がらないとはこのことでございますよ

まあ実際には、あるある制作チームというのは社内外混成の複数班体制だったのだから全部が全部このような形でつくられていたわけではないのだろうが、諄いようだがこの番組の方式で開示して嘘にならない情報というのは、すでに実証され定説化されている内容だけなのだから、それを制作スタッフの独断で組み合わせたり仮説を立てたりしたのでは、もうその時点で嘘になる。

そもそも納豆の件では、納豆に何が含まれていようと食品の形で喰って効果があるかどうかというのは完全に別の話である。そんな簡単な話だったら科学者は苦労しないわけで、マウスやラットや猿で効果があっても人間には効果がないことなど幾らでもあるのだし、皮下注射で効果があっても経口投与で効果が出ないことも腐るほどあるものだ。そこを飽くまで厳密に考えて検証するのが科学というものである。

剰え、食品というのはその有効成分だけが単独で入っているわけではなく、いろいろな成分が混在しているのだから、その食品を喰って何らかの有意な効果があるかどうかというのは机上で考えた理屈通りになるわけがない。

納豆を喰って痩せると断言出来るのは、「納豆を喰って痩せるかどうか」というそのものズバリの既存の研究実績があって、その研究で科学的説得力のあるデータが得られ、様々な追試によって内容が実証された場合だけである。さらに、その機序をあるある方式で開示していいのは、「納豆を喰って痩せた」という実験結果を説明する整合的な仮説が種々の効果的な実験によって同様に実証された場合だけである。

番組スタート当初は「定説を紹介する」という節度はあったようなのだが、ベタ糞なわかりやすさとの鬩ぎ合いの中で手続論が蔑ろにされ、この器で表現出来るものとは何かという本筋が見失われ、土台素人が机上で思い附くような仮説の立証手段とするに足りない貧弱な番組システム内の検証で得られた予定調和の結論を圧し附けるようになっていったわけである。

番組のチーフディレクターが外部の批判意見に対応しなかった理由として「われわれの出す情報は正確だと過信していた」という笑える証言をしているが、嘘も隠しもなく自分たちレベルの検証能力で「正確な情報」を発信出来ると考えていたのであれば科学的思考の枠組みを一切持ち合わせない鈍物だとしか言い様がない。まあ本気で受け取るまでもない言い訳だとは思うが、最前の「番組独自の仮説」がマジネタであったことを考えると、案外本気でそう思っていたのかもしれない(笑)。

そういう枠組みを持たない人が伝聞の範疇で何かを伝えるというのは、不足ではあっても虚偽ではないし、「定説」を「わかりやすく」伝える段階で理解不足や変な色気の故に誇張があってもそれを意図的な虚偽と断定するまでにはいかないだろう。

しかし、原理的に自力で検証不可能な「仮説」を「正確な情報」だと考えること自体はただの不見識であっても、それが公共の電波に乗せられた段階でTV局ぐるみの虚偽情報となる。その種の幼稚な不見識をチェック出来ない放送局であるのなら、公器としての適格性の問題となるからである。そのチーフディレクター個人が何う考えていたとしても、OAされた内容に対して誰一人不審に思わなかったとしたら相当IQの低い人間揃いのTV局だというしかないが、そんなわけはないのである。

そもそもネットの批判サイトや検証本を真面目に読んでいながら「われわれの出す情報は正確だと確信」可能な人間は、何処か論理的思考能力がおかしいし、そんな幼稚園児レベルの論理性の欠如が局ぐるみの体質だとはとても信じられない。だから、誰であろうがこの番組が科学的な意味では問題外の牽強付会でしかないことを識っていながら止めなかった人間が必ず存在するのである。

何故なら、それが一般則として蓋然性があるからという以外に、そうとでも考えないことには、何う性根を入れ替えたとしても、この局のつくる番組は今後一切信用出来ないことになってしまうからである。二流半の私大の文系教科の落ちこぼれ学生だったオレですら理解可能な事柄が高度な専門教育を受けたTV局のエリート社員に理解出来ないなどというわけがないし、それがあり得るとすれば意図的に目を瞑っていたということであり、目を瞑るべきでない事柄に目を瞑るということは、意図的に嘘を吐いているということと同列である。

まあ、本気でこの人たちが「われわれの出す情報は正確だと確信」していたのであれば少なくとも今後一切科学の「か」の字も口にすべきではない。本来なら小学校の理科の時間で教えて然るべき科学的手続の初歩の初歩がまったく理解出来ていないということなのだから、そこまで恥ずかしい言い訳をしたいのならどうぞご勝手に。

常々オレは一時流行った「文系人間」とか「理系人間」という人間分類法は、理系の検証手続や初学の地道な基礎訓練に馴染めなかった「自称文系人間」の発案になる言い訳にすぎないと考えているのだが、そういう意味で関テレは今後「文系TV局」とでも名乗るのがいいのではないかと思う。

勿論、関テレが「文系TV局」と名乗ったとしても、「理系TV局」などという奇妙な代物は文系TV局の脳内にしか存在しないわけではあるが。

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コメント

 昨日通勤中に聞いていたAMラジオで、
飲むだけで「一日で2.5kg、1週間で10kg痩せる」
という、脅威のダイエット茶の宣伝を耳にしました。
「そりゃ猛毒だよな。」って思いました。
 4週間分で1万円弱だそうです。
そんなもの4週間も飲んだら誰も生き残れません。

投稿: ガメラ医師 | 2007年4月 5日 (木曜日) 午後 03時44分

>ガメラ医師さん

ご無沙汰しております、その節はお世話になりました。まあ実際、カラダに目立った影響を及ぼす食品はみんな毒だという認識が一般に周知されていないというのがまずいんでしょうなぁ。薬と毒は全然別のものだと思ってる人も多いですし、塩や水にも半数致死量があるということを知らない人も多いんでしょうね。

>>一日で2.5kg、1週間で10kg痩せる

二ヶ月くらい飲み続けて、体重が「-10kg」になるかどうか試してみたい誘惑にヒシヒシと駆られますね(笑)。下げ幅が強気な割には「四週間分」という販売単位なのが弱気にも感じられるという、非常に魅力的な広告だと思います。

まあ現代人というのは、何も特別なコトをしないで普通に喰ってれば太るように出来ているので、こんなにダイエットが商売になるんでしょうが、TV局がそういうインチキな広告紛いの惹句を打つ段階ですでに何かが間違っているとしか言い様がないですねぇ。

投稿: 黒猫亭 | 2007年4月 5日 (木曜日) 午後 09時16分

この件について友人と話していて、参考になる意見を頂戴した。納豆ダイエットに関する話なのだが、その人が言うには、納豆というのは別段低カロリー食品でも何でもなく、かなりの高脂質・高カロリー食品で、二キロ痩せただの肥っただのと気にしているようなレベルの体重の方が、毎日の食事に加えて二パックも納豆を余分に喰ったら、逆に肥るのではないかということである。

まあ、納豆が本当に高脂質・高カロリー食品であるかどうかはよく識らないし、その友人は納豆嫌いの関西人なので割り引いて考える必要があるかもしれないが(笑)、あるある方式の仮説が噴飯物であることは、こういう言い方をすればわかりやすいのかなと参考になった。

そのときに出た別の話なのだが、たとえば「間接的にダイエットに役立つかもしれないがそうでもないかもしれない」程度の有効成分が、たとえばバター一ポンドにつき〇・〇一ミリグラム程度含まれているとすると、あるある方式ではバターをガンガン貪り喰えば痩せるという仮説を立てることが可能である。

実際、オリーブ油を毎日リットル単位で摂取するという豪快なダイエット法があって、人死にまで出ているらしいのだが、魔法のクスリでも含まれていない限りアブラを大量に喰って痩せるはずがないことなど子供にでもわかるだろう。

ポリフェノールを持ち上げてチョコやワインをどんどん摂れと勧めるのもこの種の底抜け論理の賜物だが、実際にバターやチョコレートを大量に喰って痩せたという実績が無視出来ないだけあれば、それはそれで新たな研究のテーマたり得るだろうが、油まみれ砂糖まみれの喰い物に何らかの有効成分がちょっぴり含まれているからカラダに良いとか痩せるとかいう「仮説」など、まあ「毎日一〇円玉を一〇〇円で買っていけば一〇日で一〇〇円の蓄財になる」というレベルの粗忽者の発想だということである。

投稿: 黒猫亭 | 2007年4月 6日 (金曜日) 午後 07時38分

ついでに言うと、

>>あるある方式ではバターをガンガン貪り喰えば痩せるという仮説を立てることが可能である。

実際には劇しい下痢で痩せるかもしれないわけだが、そうやって病的に体重が落ちた一部被験者のデータを強調して「驚異のバターパワー!」と煽るのがあるあるクオリティということである(木亥火暴!!)。

投稿: 黒猫亭 | 2007年4月 6日 (金曜日) 午後 07時57分

ちょっと思い立って、このエントリーに附けられたダイエット関係のスパムは、例示資料として原則公開することにした(笑)。踏む踏まないは各自の自己責任でお楽しみください(笑)。

投稿: 黒猫亭 | 2007年4月16日 (月曜日) 午前 06時46分

昨夜来からこんな昔のエントリに謎のアクセス集中があったので、何か「あるある」絡みで新展開があったのかと思ってググってみたら、窮めてくだらない理由だった。

当ブログでは、TVドラマや映画絡みのエントリで女優やアイドルの名前をよく出しているせいなのか、エロサイトに無意味なリンクが張られることがよくあるのだが、何かのセリフの長たらしい検索ワードで検索すると、そのリンクがトップに出ると謂うネタが某所のエロ画像板に貼られた為にアクセスが集中したと謂うのが真相だったようだ。

今なら下のほうにある「検索フレーズランキング」でその検索フレーズが確認出来るのだが、なんでこの検索ワードでここがトップになるのかよくわからない(笑)。「驚異の科学力」が引っ懸かったんだろうけど、ありふれたガンダムネタなんだから、他にもいろいろありそうなものだが。

投稿: 黒猫亭 | 2009年2月 5日 (木曜日) 午前 10時32分

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