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2007年12月24日 (月曜日)

war is over

文芸の世界には「クリスマスストーリー」というものが存在する。主にキリスト教圏の発想だが、クリスマスには苦い現実世界にもジェントルな奇跡が起こり得る、そういう性格の物語である。有名な作品は「クリスマス・キャロル」だが、欧米圏の文壇ではこの時期に競ってクリスマスストーリーの競作が行われる。勿論ティム・バートンの傑作アニメーション「ナイトメア・ビフォー・クリスマス」も一種のクリスマスストーリーである。

この種の「クリスマスの奇跡」は現実にも存在して、たとえばキリスト者はなるべくクリスマスに陰惨な人殺しをしなくても済むように骨を折ったりするわけで、「遠すぎた橋」という映画のアバンタイトルのナレーションでも、

この作戦(史上最大の空挺作戦であるマーケット・ガーデン作戦)も、古来あまたの例と同様に、クリスマス前に闘いを終わらせようとしたものである。

と語られる。これなどは欧州列強の覇権争いなんだからクリスマス前にさっさと戦争を終わらせたいと考えるのは勝手だが、どうもオレはクリスマスの奇跡というのが胡散臭くて好きではない。嘗てのBAND AIDの「DO THEY KNOW IT'S CHRISMAS? 」というのも、楽曲としては好きだが、エチオピアの飢えた子供たちに今日の日がクリスマスだということを教えようというのが、エチオピアの宗教状況を考えると微妙すぎる話である。

クリスマスにはジェントルな奇跡が起こるという発想自体が、欧米的な独善を内包した一種の宗教的不寛容性の思想と言えるだろう。恐らく世界中で一番平和なクリスマスというのは、戦後進駐軍がもたらした欧米文化の影響で、一年の浮世の憂さを払うキャバレーの莫迦騒ぎの口実として始まった本邦のクリスマスではないだろうか。

戦争が終わり漸く復興の時代が始まった嬉しさを、敗戦国の働き手であるお父さんたちが戦勝国の宗教文化に則って大人の社交場の莫迦騒ぎの口実として祝う。これは世界有数の平和なクリスマスではないかと愚考したりするわけである(笑)。クリスマスなんてイベントは、マジで考えては決してならない。「日本全国酒飲み音頭」レベルの莫迦騒ぎの口実と捉えるのが平和である。

ともあれ、今年も無事にクリスマスを迎えられたことに乾杯。

世界中のすべての人々に(笑)、メリークリスマス。

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コメント

ちなみに、マーケット・ガーデン作戦というのは歴史的な大敗を喫した作戦で、「遠すぎた橋」という映画は、この壮大な作戦が何故失敗したのかを三時間に亘ってネチネチと詳細に語る作品である。最終的にこの作戦が何故失敗したのかを問われた発案者の側近は「あの橋は、ちょっと遠すぎましたな」という唖然とするような無責任な一言で片付け、それがタイトルの由来となっている。映画秘宝では糞味噌に貶されているが、オレは戦争映画の中でこの作品が一番好きである。敗戦国民のくせに、戦争映画に爽快なカタルシスなんか求めるなよ(笑)。

それから、「クリスマス前に戦争を終わらせる」というのは単なるレトリックで、実際のところは単に越冬したくなかったから戦争終結を急いだという意味だろう。欧州の戦争では、古来より冬を跨いだ戦争はろくなことになった例がない。

投稿: 黒猫亭 | 2007年12月25日 (火曜日) 午前 08時51分

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