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2008年7月 6日 (日曜日)

或る起源説話

以下はオレが或る友人とよく話す莫迦話である。剰りに馬鹿馬鹿しいので、全部畳むことにしたから、読まれる場合は自己責任にてお願いしたい(笑)。

今の人は誰も識らないが、本来は春夏秋冬がきっちり同じだけあるのが正しい。それがげんざい只今のように冬と夏ばかりが長く春秋が短くなったについては、こういうお話が伝えられている。

日本の四季は、年神様の娘の冬子、春子、夏子、秋子の四姉妹が司っている。長女の冬子は陰気で几帳面で厳格な性格である。次女の春子は暢気で天然で要領の良い性格である。三女の夏子はわがままで自己主張が強くて自分勝手で気紛れな性格である。末娘の秋子は真面目で気が優しいが押しが弱いのでいつも損をする性格である。

冬子は色白で痩せていて長身でいつもモノトーンのスーツを着ている。春子は小柄で女の子らしい体型でキャンキャンでエビちゃんが着ているようなミニワンピを着ている。秋子は中背で豊満な肉附きで地味なアースカラーのカーディガンとロングスカートを身に着けている。夏子は地黒で肥えていて今時とげぬき地蔵前商店街でしか売っていないようなケバいブーゲンビリア柄のムームーを引っ被っていていつもしっとり汗で湿っていて脇毛の剃り跡が何故か常に三分ばかり伸びている。

この四姉妹の内では三女の夏子が幅を利かせていて、いつも長女の冬子と衝突しているので、春子と秋子の影が薄い。冬子が厳しい冬をもたらした後、春子が適当に春の支度をしていると、気の早い夏子が押し掛けてきて「来ちゃったわよ」と居座る。春子は生来適当で要領の良い性格なので、「あら、もう夏子が来たのね」と言ってろくに仕事もせずに夏子にバトンを渡して遊んで暮らしているのだが、長女の冬子は影ながらそれを視ていて内心不愉快に思っている。

几帳面で仕切屋の長姉にしてみれば、図々しくていい加減でわがままな夏子も気に入らないし、ちゃらんぽらんで調子の好い春子も気に入らない。殊には自分勝手な夏子は、梅雨時に雨を降らせたり降らせなかったり、無闇に暑かったり無闇に寒かったりで、気分のほうが乗って参りますと立て続けに颱風を吹かせたり、窮めて出鱈目な仕事ぶりなのが、几帳面で神経質な冬子には勘に触るのである。

そういうふうにわがまま勝手でやる気のない仕事ぶりのくせに、夏子は毎年出しゃばりで長っ尻で一旦居座るといつまで経っても帰ろうとしない。真面目な秋子は九月頃になるとすでに秋の準備を済ませてやきもきしながら待っているのだが、夏子は一向に帰る気配もなく、西瓜にかぶりつきながら二七時間テレビを観たりしてゴロゴロ居座っている。九月も半ばを過ぎる頃合いには、そろそろ冬子の機嫌が悪くなり口喧嘩が始まる。

「ちょっと、あんた長居するのもいい加減にしなさいよ、秋子のほうはもう支度を済ませて待ってるじゃないの」

そうすると、テレビの前でマグロのように横着に横たわった夏子はだみ声で、

「あーら、準備万端ならいつだっていいってことじゃないの、出番でもないお姉ちゃんがとやかく仕切ることでもないでしょ」

とか口答えをするものだから、

「用もないのにあんたに居座られたら迷惑する人が大勢いるのよ、ちょっとはそういうことも考えて仕事をしてもらわないと、道理が立ちません。第一、真面目な秋子が可哀相じゃないの」

と、この辺で秋子が巻き添えを喰わされる。夏休みの宿題を最初の一週間で済ませてしまうタイプの秋子は、何となく厭な雲行きになってきたので慌てて仲裁に入る。

「冬子お姉ちゃん、あたしはいいのよ、夏子お姉ちゃんはこういう人だから好きなようにさせてあげて」

そうすると、冬子も夏子も黙っていない。

「『こういう人』ってのはどういう意味よ、あんた優等生だからって生意気よ。冬子も気に入らないけど、あんたみたいな子も大嫌いだから精々困らせてあげるわよ」

夏子がこのように憎々しげに言い放てば、冬子のほうも嵩に懸かって、

「あんたがそういうふうに夏子を甘やかすのも良くないわ、ちゃんと時節になったら夏子を押し退けてでも自分の仕事をするのでなくては、四季が一年で廻らなくて次番手のわたしも苦労する羽目になるのよ」

二人の姉からガミガミどやし附けられて、進退窮まった秋子がちらと横目で春子の様子を窺うと、何処を風が吹きますかという体で知らん顔をしている。春子お姉ちゃんはいつもずるい。冬子お姉ちゃんはいつも怒っている。夏子お姉ちゃんは自分勝手で意地悪だ。割りを喰わされるのはいつも自分である。

よく出来た秋子もこの辺で無性に悔しくなってくる。

「わかりました。夏子お姉ちゃんはお好きなだけいればいいし、それでわたしの出番が遅れても、冬子お姉ちゃんには一切ご迷惑はおかけしません、ちゃんときっちり仕事もさせて戴きます」

切り口上でこれだけの啖呵を切ると、薄情な冬子は、「そうなの。わたしはあんたの為にも言いにくいことを言ってあげているというのに、そういう口を利くのですね。では勝手になさい、わたしに一切迷惑を掛けないというのであればわたしが口を挟むことではありませんね」と踵を返し、夏子は夏子で「わかればいいのよ、すべてあたしの言う通りにしておけば何の間違いもないのよ」と、間違いだらけの自堕落な性格のくせをして威張り返っているばかりである。

そうして、居座るだけ居座った挙げ句、適当な仕事ぶりにも飽きた夏子が帰る頃にはすでに一年が終わろうとしている。真面目な秋子は大忙しでやるだけのことをやり、秋の穣りをもたらして長姉の冬子にバトンを返す。かくして、足早に秋は来たり秋は逝く。

われわれが冬に備えて秋の穣りを楽しむことが出来るのは、上の姉たちの強情尽く意地尽くのつまらない諍いの帳尻を、秋子が一生懸命合わせてくれているからである。

そういう次第で、オレは四季の中では秋の肩を持つことにしている。

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コメント

>>夏子は地黒で肥えていて今時とげぬき地蔵前商店街でしか売っていないようなケバいブーゲンビリア柄のムームーを引っ被っていていつもしっとり汗で湿っていて脇毛の剃り跡が何故か常に三分ばかり伸びている。

映画「フラガール」のヒットもあってそれなりに識っている人もいるとは思うが、今の若い世代の人は「ムームー」なんて衣類の存在を識らないかもしれないので、念の為にウィキの解説を挙げておく。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A0%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%83%BC_%28%E8%A1%A3%E6%9C%8D%29

一部の地方では「アッパッパー」とも呼ぶが、調べてみたらこれは厳密にはムームーと完全に同じものではないようである。また、「アッパラパー」とかそれに類似のアフォを指す言葉の語源ともなっているらしい。

http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%C3%A5%D1%A5%C3%A5%D1%A1%BC

オレの田舎でも、オレが子供の頃まではオバチャンの夏の衣裳は「アッパッパー」と決まったもので、それ以前となると屋内では「シュミーズ一丁」というのがメジャーなスタイルだったようだが、大学生の頃に読んだくらもちふさこのマンガでこの言葉が出てきた時には、すでに懐かしいという感を覚えたので、今の人が識らなくても無理はないだろうと思う。

これはまあ、オレの子供の頃は一般家庭にエアコンなんかなかったから、少しでも夏を涼やかに過ごす為の必然でもあったわけである。当然夏場には年寄りがバタバタ死んでいたし、健康な人間でも夏場に熱い物は喰えなかったから、素麺とか冷や麦ばかり喰っていて、秋口には誰しも夏バテでヘロヘロになっていた、そういう時代の話である。

投稿: 黒猫亭 | 2008年7月 6日 (日曜日) 午後 11時59分

解説不要で理解できてしまいました……。
健気で穏やかで過ごしやすい秋へ、無意識に好みが投影されているのではないかと感じられるのは気のせいでしょうか。

数日前までの酷い暑さに物が腐るわ体がバテるわ、今年こそ夏越の祓に行こうと考えていたのですが叶いませんでした。

時節柄どうぞご自愛下さいませ。

投稿: 604 | 2008年7月 8日 (火曜日) 午前 09時37分

秋生まれなので、秋の肩を持ちます。
ツーリングにも一番いい季節だし(笑)

私ももちろん解説不要です。
近所のスーパー銭湯では、ムームーの老若男女(いや、男は着ませんね)が闊歩しておりますし。

投稿: 山形ミクラス | 2008年7月 8日 (火曜日) 午後 10時15分

>604さん

>>解説不要で理解できてしまいました……。

いやあ、何せこの解説は「今の若い世代の人」に向けたもの…いや、げふんげふん。

>>健気で穏やかで過ごしやすい秋へ、無意識に好みが投影されているのではないかと感じられるのは気のせいでしょうか。

仰る通り、四季の中では秋が一番好きですね。棲んでいる地域にもよるでしょうが、過ごしやすくて助かりますし、喰い物が美味しいのが最高です(笑)。ただ、今の気候だと秋と呼べる期間はごく短いような気がしますね。

以前は冬も好きだったんですが、最近歳をとったせいか、冬場は昔の骨折箇所が傷んだり神経痛が出てよく眠れないようになったので、昔ほど好きではなくなりました。古痍が痛むのも神経痛が出るのも、昔商売でバイクに乗っていたせいですね。

雨の日も風の日も雪の日も一日中バイクに乗っていたわけですから、まあ四〇くらいで神経痛が出ても仕方ないですね(笑)。バイクに乗っていると手の指先と向こう脛が一番冷えるので、冬場になると向こう脛が疼いて寝られないくらい気持ち悪いです。手の指先も冷やすと若干痛みますね。それから、これは加齢のせいだと思うんですが昔より代謝が落ちて寒さに弱くなりました。

あと、春は昔から嫌いですね、なんか木の芽時になると妙に全身の神経がムズムズして変な蟻走感が走るんですよ。ただ、女の子の春のファッションは好きです(笑)。夏場の肌を大部分露出した半裸みたいな出で立ちだと、かなり下世話な助平心を誘いますけれど(笑)、春先の出で立ちはちょうどよく可愛くてちょっとだけエッチなのが抑制が利いていて好きですね。

いや、基本的に想定しているのはやっぱりCan Cam系なんですが(木亥火暴!!)。

で、夏は当然嫌いです。お米の作柄に影響さえなかったら、この国に夏なんて要らないとすら思います(木亥火暴!!)。

オレが夏の存在を許容しているのは、ひとえに美味い米の飯が喰いたいからで、それさえなかったら夏なんてノシを附けて沖縄に送り返してやります(木亥火暴!!)。なんで沖縄かというと、多分日本における夏子の本拠地は颱風銀座の沖縄なんじゃないかと勝手に決め附けているからですが(木亥火暴!!)。

投稿: 黒猫亭 | 2008年7月10日 (木曜日) 午前 10時57分

>山形ミクラスさん

>>秋生まれなので、秋の肩を持ちます。
>>ツーリングにも一番いい季節だし(笑)

夏生まれなのに夏が大嫌いな黒猫亭です(木亥火暴!!)。

604 さんへのレスにも書きましたが、オレも昔はバイクに乗っていましたので、秋口になるとツーリングの経験を想い出します。楽しみで乗るなら、やっぱりバイクは春か秋のものですね。冬場はともかく、夏に乗るもんじゃないです(笑)。エンジン自体が熱源だということもありますし、シートは大概黒いので、三〇分ほど休んでから跨ると内腿が火傷するほど熱くなっているのがむかつきます。

バイカーだった頃には一応ツーリング友達みたいなのが一人いましたので、二人で月に一度くらい主に神奈川方面に走りに行っていました。夏場にも日帰りツーリングに行きましたけど、やっぱり革のツーリングウェアの上下で半裸の男女が戯れ合う江ノ島とか歩くのは、いろんな意味でキツいです(木亥火暴!!)。その当時は、オレがバンディットSVで相方がカタナのイレブンだったんで、なんだかスズキマニアご一行様みたいでしたが、スズキ車はそれしか乗ったことがないので許してください(笑)。

商売で会社のバイクに乗っていたから結構車歴は多彩だと思うんですが、個人的な好みで言うなら、オレ、VT系が大好きな平凡人なんです(木亥火暴!!)。

投稿: 黒猫亭 | 2008年7月10日 (木曜日) 午前 10時58分

こんばんは。

彼女にするなら春、嫁にするなら秋と言ったところでしょうか(木亥火暴!!)。いや、それはそれなりに苦労しそうな気もするし・・。

口うるさい小姑がもれなくついて来るというのはとりあえずおいとくとしても(笑)。

あ、オレは「冬」を嫁にしたから尻に敷かれてるのかもしれない(木亥火暴!!)。

投稿: がん | 2008年7月12日 (土曜日) 午後 11時05分

>がんさん

起源説話というのは、或る事象を説明する機能を担った例え話としての言説なのだと思いますが、それがたちまち「四季 奈津子」とか「細雪」とか「姉妹坂」の世界にドライブしてしまう辺りががんさんらしいですなぁ(木亥火暴!!)。いや、感服仕りました、その筋金入りの助平心(木亥火暴!!)。

実際のところ、マンガの世界で兄弟姉妹という主人公サイドの人脈設定は、手っ取り早くいろんなタイプの美男美女を用意する手段として使われていますよね。昨年一月期の連ドラ「ヒミツの花園」なんてのも、本来そういう「美少年からイケメンまで、各種取りそろえてますよ」的な設定のはずなんですが、池田鉄洋が剰りに外してましたねぇ。

ストレートなパターンとしては、今年の一月期の「4姉妹探偵団」なんてのもありましたけど、主人公の夏帆はともかく、中越典子と加藤夏希と市川由衣のお姉ちゃんというのは、みんな系統的にS系で変わり映えしないじゃないかと思いました(笑)。例のポッキーのCMとコラボ企画の「四姉妹物語」では、清水美砂、牧瀬里穂、中江有里、今村雅美という顔ぶれで、一応わかりやすくタイプがバラけていましたね。

フィクション世界の美人姉妹設定では、本命の恋人や嫁以外に漏れなく多彩な美人の義姉妹が数人附いてくるというのが美味しいところですけどね、少なくともオレは身内に夏子みたいな義姉が出来るのだけは絶対に厭ですね(木亥火暴!!)。

>>口うるさい小姑がもれなくついて来るというのはとりあえずおいとくとしても(笑)。

実在の美人姉妹で謂うと、先日スマスマに姉妹揃って出演した、あんな、えれな、香里奈の能瀬三姉妹がいますね。一応ご説明しておきますと、この三姉妹の本名と芸名の関係は微妙にややこしくて、三姉妹の本名はそれぞれ能瀬安奈、能瀬英令奈、能瀬香里奈というんですが、三女だけ芸名が本名の正式表記の名字抜きで「香里奈」、長女と次女の芸名は平仮名に開いたもので、長女だけ名字が附いていますが本名と一字替えて「能世あんな」、次女は平仮名表記で尚かつ名字抜きという姉と妹の折衷型で「えれな」となります。

この三姉妹の関係で謂うと、やっぱり長女と次女のセットで仕事をすることが多く、三女は二人の姉とは別に女優をメインにやっています。先日のスマスマのトークによると私生活上でも長女・次女対三女という関係になるようですから、もし仮に、いや飽くまで仮にですよ、オレが香里奈を嫁に貰ったと想定しましょう、いや想定してください、お願いします(木亥火暴!!)。

で、どうも香里奈という人は上にしっかり者の名古屋女の姉が二人もいる序列で育ったせいか、姉妹内の関係では甘えん坊さんになることが多くて意外とだらしないらしいのですが、それを二人の姉に口やかましく叱られるらしいのです。そうすると、この三姉妹の間で喧嘩が起こった場合は、大体において香里奈が悪いわけで、でも嫁に貰った以上はオレは香里奈の肩を持たなければならないわけで、お姉ちゃんたちが正しいと腹では判っていても香里奈を擁護しなければならないわけですよ。

いやあ、辛いなぁ、自ら望んだこととはいえ、オレも辛い立場に置かれたものです。

…すいません、あんまり暑いので妄想がドライブしました(木亥火暴!!)。

投稿: 黒猫亭 | 2008年7月13日 (日曜日) 午前 12時06分

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