衣を身に着ける
鬱陶しい梅雨もそろそろ終わり、やっと夏らしくなって来た頃合いに暑苦しい揚げ物の話をするのも「季ぃ違い」で恐縮だが、一般家庭でカツやフライを作ると、パン粉の衣が剥がれやすくなって難儀している方もさだめし多いのではないだろうか。
ネットや料理書でカツ・フライ類のレシピを調べると、まず具材に薄力粉をまぶしてからボウルに溶いた卵液に漬け、バットに厚く敷いたパン粉の上に置き、上からパン粉をたっぷりまぶしてしっかり圧し附けると謂うふうに書いてあることが多い。
オレはかねてからこのやり方に疑問を持っていて、グルテン含有量が少なく殆ど粘りの出ない薄力粉をまぶしてから溶き卵をくぐらせてパン粉を圧着するのであれば、衣を構成する食材は存在しても具と衣を繋ぎ合わせる媒介物が一切存在しない。
薄力粉はカラッと揚げる為にまぶすだけだから、この構成だと普通の天ぷらなんかよりももっと粘りの少ない薄くて硬い生地でパン粉の衣をくっつけていることになる。これでは、揚がった後に衣が割れたり剥がれたりしないほうが不思議だろう。
多分、玄人にはまたそのやり方で上手く揚げるコツがあると思うのだが、一般家庭でこのやり方で作ると無闇に衣が薄くなってしまい、包丁で切ったり箸で持ち上げたりすると衣がパックリ割れたりズルリと剥がれて、カツを喰っているんだか素揚げの出来損ないを喰っているんだかわからなくなることはたしかである。
トンカツや魚介のフライなら、具にしっかりと纏まりがあるからそれでも我慢出来ないこともないのであるが、これがメンチカツやコロッケのようなパテ状の食材を捏ねたものだと、衣が剥がれたら何だかわからない代物になる。
メンチカツやコロッケの衣が剥げてしまったら、ただの肉団子やただのマッシュポテトやただのホワイトソースの塊でしかないではないか(笑)。ライスコロッケに至っては、「単なる油っこい俵むすび」である。それはすでにもう、揚げ物とは呼べないだろう。
普通に考えるなら、粉と卵とパン粉と謂う構成でも、生地にもっと粘りを出してやればパン粉の喰いが良いはずであるから、薄力粉をまぶすと謂うプロセスがどうも怪しいとオレは睨んだ。時々テレビでトンカツ屋の厨房を取材したものを見ると、型通りに粉と卵液とパン粉の順に附けて衣を作っているところが勿論多いが、ボウルに溶いたドロッとした生地に漬けてからパン粉をまぶしている店も時折見掛ける。
これはつまり、粉と卵を別々に順番に附けるのではなく、最初から粉と卵を混ぜ合わせた生地を作っておいて、それに漬けるほうが衣の厚みが出せると謂うことだろうと当たりを附けたのだが、しかし薄力粉を使うのであればほぼお好み焼きや天ぷらの生地と変わらないわけで、それと卵を合わせたものがそんなにしっかり具に絡むかと謂えばそうではないだろう。
天ぷらなんてのは、実はそんなに具と衣がしっかり附いているわけではなくて、サクサクカラリとした衣に包まれて具が蒸し上がっていれば好いわけだから、天ぷら式の生地でも依然として衣と具の喰い附きは従来のやり方と変わらないことになる。
多少料理に詳しい人ならすでに最初からピンと来ているだろうが、薄力粉をもっと粘る粉に変えてやって、さらに予め卵と混ぜておいて具材をくぐらせれば、理屈の上では衣の附きが格段に良くなるはずである。つまり、練り生地を具材に纏わせ、その生地の層にパン粉が喰い込むようなイメージである。それなら生地自体が具材とパン粉を接着する媒介物の役割を果たすはずである。
粘る粉と謂えばパンを焼くのに使う強力粉があって、「パンを焼くよく粘る粉」なのだからさぞかしパン粉の附きも良いだろうとは思うが、強力粉だけではごわごわした硬い生地になって食感が悪くなるのは勿論、逆に衣が割れやすくなるような気がするので、薄力粉に適量混ぜてやればどうだろうか、と考えていたのだが、強力粉と薄力粉を混ぜた混合粉と謂えば、それは要するにうどん粉ではないかと気が附いた(笑)。
それで大体世の中の仕組みがわかってきたのだが(笑)、教科書通りのレシピで作るのであれば、パン粉をつなぎ止めているのは卵液だけなので、薄くてサックリした剥がれやすい衣になり、洋食のビーフカツレツや香草パン粉焼きのように生地はほんのり黄色味がかっているはずである。しかし、そんな衣のカツなんてトンカツ専門店や洋食屋以外では見たことがないし、専門料理店でも必ずそんな衣であると限ったものでもない。
肉屋やスーパーで売っている総菜のフライ類は専門料理店の料理より衣が厚めで、包丁で半割にするとしっかり生地の層があり白っぽい色をしているのが殆どである。この白い生地の層は、冷めるとちょっとモッチリした食感があって、薄いから今までピンと来なかったのだが、たしかにこれはうどんに似たモッチリ感である。多分、総菜店とトンカツ専門店とでは衣の構成が違うと謂うことだろう。
これはつまり、トンカツ専門店の料理は揚げた直後に喰うから薄くてサックリした衣でも構わないが、総菜店のフライ類は大量に揚げた後に暫時売場にストックされ、さらに客が購入した後も食事時まで手を着けられないのだから、外食料理店と同様な発想で衣を作ってはいないと謂うことである。そもそも、たとえばスーパーの揚げ物がトングで触っただけで衣が割れ剥がれてしまうのでは商売にならないだろう。
おそらく、総菜店や比較的衣の厚いトンカツ屋のフライ類は、中力粉と卵液を合わせた練り生地に漬けてからパン粉をまぶしているのではないかと思ったので、早速自宅で試してみた。とはいえ、中間品種小麦の中力粉をそのまま買ってきたのでは、それが合わなかったらオシマイなので、強力粉を買ってきて薄力粉と合わせる形で試してみた。
ここで註釈すると、「中力粉」と謂う言葉で表される粉には二種類あって、強力粉と薄力粉を任意の割合で混ぜ合わせた混合粉と、強力粉と薄力粉の中間程度のグルテン含有量の品種の小麦を挽いた粉がある。グルテン量だけで謂うと同じことなのだが、元々の含有量が中間なのと、含有量の多いものと少ないものを混合して作るのでは、やはり食材としての物性や加工特性に違いがあるようである。
うどんや冷や麦など、和食の麺に使われる中力粉は中間品種の粉だが、ラーメンに使う中力粉は一口に中力粉と謂っても強力粉寄りの混合粉らしい。であるから、ラーメンに使う粉を強力粉と表現しているところもあれば、中力粉と表現しているところもあって一定していない。
これはラーメンの麺の場合は、或る程度グルテン含有量の調節が出来たほうが麺の特性にバリエーションの幅が出て便利だからではないかと思う。うどんや冷や麦は、和食の麺に向いた中間品種の粉をそのまま使って練ると謂うことだろう。ラーメンの麺は、うどんなどに比べて麺の生地自体の特性の幅がかなり広いが、使っている粉の特性がそもそも一律ではないのだからそれも自然である。
閑話休題、薄力粉は勿論常備しているので強力粉を買ってきて試してみたのだが、やはり一対一くらいではかなり衣が硬くなってゴワゴワする。好きずきもあるだろうからご自分でも試してみるのが一番だとは思うが、強力粉と薄力粉が一対二くらいが丁度好い割合ではないかと思う。
オレは一旦篩った粉を水を加えずに直接卵液と混ぜゴムべらでダマを潰しながら合わせたのだが、粘りのほうは強力粉で調節して、少量水を加えて緩くしたほうが扱い易いしサクサク感も向上するかもしれない。このやり方で大体総菜店で売っている揚げ物と同様のしっかりした衣の仕上がりになることがわかった。
では、一般家庭では総菜店と専門料理店のどちらのやり方に従うべきかと謂えば、おそらく総菜店のほうではないかと思う。薄くてサックリした衣でしっかりカラッと揚げるには、やっぱり料理人の腕と経験が要るのではないかと思う。
しかも、オレのような独り者なら揚がり次第に出来立てを喰えば好いのだが、三人以上の家族だと、人数分揚がってから盛り附けて全員食卓に揃って「いただきます」をするまでに或る程度時間が掛かるし、誰かの帰りが遅い場合などはそのままラップを掛け冷蔵する場合もある。薄い衣のカツやフライは、一旦冷蔵してチンするとまず九分九厘まで衣が剥がれて、揚げ物としては喰えたものではない。
また、一般家庭の事情ではこれが意外と大きいと思うのだが(笑)、みつどんさんのように揚げ物を作りすぎてしまった場合や翌日に残してしまった場合に、何でも甘辛く煮てしまうとか割り下で煮て卵で綴じて丼に仕立ててしまうと謂う家庭はかなり多いと思うのだが(笑)、揚げ物を二次加工して煮る場合は、とにかく衣がしっかり厚いほうほうが美味しいと謂うことがある。以前hietaro さんが「パンカツサンド」の実作を紹介しておられたぐらいで、カツ煮と謂うのは甘辛い割り下と卵が絡んだ衣こそがメインのごっつぉで中の具材なんか飾りである。偉い人にはそれが(ry
調理技術の面で考えても、たとえばトンカツ専門店でも総菜店でも一度に大量に揚げる為にコンピュータ制御で油温を一定に調節可能なフライヤーがあったりするが、一般家庭にはそんな便利な厨具はない。さらに昨今は不景気の煽りで台所にも質素倹約の涼風が吹いていて、フライが半分浸かるくらいの少量の油で揚げる方式が主流なのだから、油温を一定に保つのが物凄く難しい。
イメージで考えると少量の油のほうが温度調節が容易いようにも思えるが、食用油は微妙な火加減ですぐに温度が上がったり下がったりするので、少量の油を何分間も一定温度に保つのは意外に火加減が難しい。却って量があったほうが温度の上下動が少ないので、大きな鍋にたっぷりの油で揚げたほうが失敗が少ないのだが、今時の貧乏人がそんな贅沢なことは出来ないから、一度に人数分を揚げると同時に揚げ時間自体を短くするしか対策はない。
つまり、一六〇度くらいの中温で両面三〇秒前後ずつ揚げて、一旦バットに取って四分ほど置いて予熱で中まで火を通し、その間に一八〇度くらいの高温に上げておいた油でさらに三〇秒前後サッと二度揚げし、再びバットに取って暫く予熱を通すことでカラッとした食感を出すわけであるが、このやり方だと比較的衣が厚めのほうが具合が良い。
外側のパン粉の衣が吸った油の予熱で火が通るわけだから、衣が薄いとすぐに油が冷めてしまって火が通りにくい。ただ、その分、衣が吸った油の分だけちょっと重くてしつこい仕上がりになるのだが、サッパリ軽くてサクサクした仕上がりの揚げ物は、やっぱり専門店で喰うのが一番であって、一般家庭ではちょっと難しい。
フライが泳ぐほど揚げ鍋にたっぷりの上等なキャノーラ油を使って、デジタル温度計で油温をマメに調節しながら揚げてやれば(安物のバイメタル式だとどうしても火加減の調節が後手に廻るので揚げ物には向かない)、多分一般家庭でもそこらの総菜店より美味しいフライが作れると思うから、要はコストパフォーマンスの問題でもあって、勿論そう謂う本格的な作り方をするのに越したことはない。
本来フライ類はたっぷりの油で揚げたほうが美味しい、と謂うのは、前述の油温調節の問題もあるが、ひたひたくらいの量の油で揚げると、具材の自重でパン粉の衣が鍋底に圧し附けられベタッと潰れて表面が平坦になり、大量の油で揚げたときのような食感豊かな表面状態にならないからである。
何とかパン粉の形状をそのまま残して揚げたいといろいろ考えてみたのだが、揚げ焼きのような方式で揚げる限り、どうしても揚げ物と鍋の底が密着するので表面が突き固めたように平坦になってしまうのは避けられない。これは以前のエントリで語った「掻き揚げの底」を作るのと同じ理屈であるから、やっぱり、たっぷりの油の中を泳がせて鍋肌に触れさせないと謂う以外に解法はないのである。
そうは謂っても、揚げ油、就中フライ類を揚げた残りの油は、どれだけ丁寧に漉してもパン粉の細かい欠片が炭化した焦げ臭さが油に染みつくので、再利用するのは諦めるしかなく、勿体ないが一回毎に使い捨てることになる。一般家庭の料理で、深鍋にたっぷり一杯の油を一回一回使い捨てるのはどう考えても贅沢で不経済だから、フライパンにひたひた程度の油で何とかしたくなってくるのが人情だが、この方式だとどうしても表面が潰れてしまうわけである。
これはたとえばビーフカツレツとか香草パン粉焼きみたいな料理なら、バターを加えた低温の油で揚げ焼きするのが本式だから、表面が潰れていても当然なのだが、日本独自の洋食のカツやフライとなると話は別である。サクサクと揚がったパン粉の軽快な食感も味の内なのだから、本当はもうちょっと本格的に揚げたいところだが、手許不如意でそこまでの贅沢が出来ないのが哀しいところである(笑)。
そう謂う次第で、「夜中に立ち食い蕎麦レベルの温かい蕎麦を作る」「その辺の美味い中華料理屋レベルのあんかけ焼きそばを作る」エントリに続いて、今回も「トンカツ屋のやり方を棄てて美味い総菜店のレベルを目指す」と謂う、高級なんだか低級なんだかよくわからない屈折した到達点の話になってしまったわけであるが(笑)、物凄く美味い料理と謂うのはプロの領分であって自分で作る必要はないのである。
わざわざ自分で作る料理と謂うのは、不味いのを我慢しなくて好い料理、自分が喰いたいと思う味を或る程度再現した料理であるべきである。そもそもオレは、かまぼこの厚切りを真っ直ぐ切れないくらいの不器用者なので、高級な料理を自分で作ろうとするほど向上心のある人間でもないが、かと謂って不味いものを喰っても平気で生きていけるほど腹の据わった人間でもないので、料理の話をすると大体こんな感じのラインになるのである(笑)。
珍しくブクマをたくさん戴いたのでお礼を兼ねて追記(09.08.01)。
いつも文章だけの考察で手順や出来上がりの写真を添えていないのと、型通りのレシピの書式を採っていないので、レシピを検索して来られる方からはスルーされることが多いようなのですが(笑)、今回は過分のお褒めに与りまして有り難うございます。
また、練り生地の配合についていろいろなやり方をブコメでご教示戴いたので、はてブにアクセスされない方の為にも簡単な箇条書きに纏めさせて戴きます。本文との関連上薄力粉と中力粉と強力粉を区別する必要があるので文脈から判断しましたが、解釈が間違っているようならご指摘ください。
●薄力粉・水を練ったもの:aozora21さん
●薄力粉・水を練ったもの+卵液:みつどんさん
●薄力粉・水・山芋を混ぜて練ったもの:tvampさん
●薄力粉・水・卵に酢を少量混ぜて練ったもの:tvampさん
●中力粉(うどん粉)・水を練ったもの:みつどんさん
●強力粉の打ち粉+専用ミックス粉・水を練ったもの:どらねこさん
※素材の近い順にソートしていますので順不同です。
※素材の並びは共通要素の順で、食品の内容表示のように質量の多い順ではありません。
全体に薄力粉派が多いですから、具材と衣の密着よりも衣をしっかり作るほうにウェイトが掛かっていると謂うことでしょうね。具材と衣の密着と謂う観点では、どらねこさんご紹介の「強力粉を打ち粉に使う」と謂うやり方が面白そうです。スーパーのやり方だと謂うことですから、やはり「剥がれない衣」の糊の役割として強力粉を使うと謂うことでしょう。
また、その他では、tvamp さんの「衣を柔らかくする為に少量の酢を混ぜる」と謂うのが如何にもありそうで興味を惹かれたんですが、オレの調理技術では仕上がりムラの誤差の範疇を超えて確認することが出来ないので(笑)、どなたか腕のたしかな方が確認してくださると有り難いと思います。
蛇足:表題については、洒落と謂うほど明示的な意図はないんですが、先日のエントリで触れた関東落語の「新聞記事」と謂う演題のオチを下敷きにしています。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
こんにちは。
食べ物の話題になると直ぐに食いつく私です(笑)
ご紹介のやり方に”ソレ確か名前がついていたなー、何だっけ?”と考え出したら思い出せない事がどうしても気持ち悪くて、調べてしまいました(働け私、今日あたり客から進行確認の電話がありそうなのに)。
「おいしい とんかつ レシピ 液」でググって、見つけました。
その名も”バッター液 ”です(スッキリ)。以下のは”ためしてガッテン”のレシピですが、他にも幾つか情報がありました。
http://www3.nhk.or.jp/gatten/archive/2008q2/20080604recipe/tonkatsu.html
ついでに見つけた
http://www2.neweb.ne.jp/wd/rando15/tyubou/tyuubounoheya.html
ここのやり方も美味しいそうです。
昔、お肉屋さんの店先で揚げたてを売っていたトンカツが美味しかった気がするのは、記憶が美化されている点もあるでしょうが、揚げ油にラードを使っていたせいもあると睨んでいます。
ところで、私はモスチキンの”ころも”が好きで、あの”ころも”を再現したくて何度かチャレンジしていますが、今のところ惨敗中です。食感を良くするために米粉を使っているのは判っているんですが、もしかすると米が違うのかもしれないと最近考え始めました。ベトナム料理にバンセオというやはり米粉を使った料理があるのですが、日本の上新粉を使うともたっとして、本場のパリッって感じが出ないのですね。同じ米粉でも、中粒米ではなくて長粒米かもしれない、とか・・・・・・・・。
これ以上ぐだぐだになる前に、お仕事に戻ります。お邪魔致しましたっ。
投稿: うさぎ林檎 | 2009年7月29日 (水曜日) 午後 02時16分
一般論だけでは味気ないので、何か物凄く簡単なレシピでも。「にせトンカツの挟み揚げ」と謂うのは、結構簡単な上にいろいろ応用が効いて便利である。
要するに整形肉のトンカツなのだが、夜中に不図トンカツが喰いたくなったときに冷蔵庫にロース肉の厚切りがない、すぐ近所にも売っていない、と謂うのは割と当たり前の状況だが(笑)、豚小間なら冷蔵庫にストックがあることが多いし、コンビニでも売っているだろう。これを喰いたい分だけ用意する(笑)。ロースの切り身だと細かい分量の調節が出来ないが、豚小間なら喰えるだけ・喰いたいだけ用意すれば好いので楽である。
まず、豚小間に塩・黒こしょう・ナツメグなどで下味を附け、ラップに包んで揉んで全体に廻す。下味が全体に廻ったら、まな板の上にラップに包んだ肉を載せ、擂り粉木などでひたすら叩いて伸ばす。伸ばしたら畳んでまた叩く。数回繰り返して肉を伸ばしたら、スライスチーズや大葉や梅肉など挟みたいものを挟んで二つに畳み、形を整える。
あとは本文のやり方で衣を着けて普通に揚げれば出来上がりである。中に何を挟むかは自由であるから、各自お好みで工夫されたい。オレは左程好きではないが、余った生ハムやサラミの薄切りなんかを挟んでも風味が附いて美味いだろう。
予め塩を振るのは味附けと謂う意味の他に結着剤の代わりで、整形肉のステーキなんかと同じ理屈なので、食感はトンカツとメンチカツの中間くらいの感触になる。前述の通り分量調節が自在なのと、叩き伸ばすことで安物の肉でも筋肉繊維が毀れて柔らかくなること、また刃物で切り身を二枚に開く必要もなくラップを使って手を汚さずに簡単に別の具材を挟むことが出来ること、このようなメリットがある。
投稿: 黒猫亭 | 2009年7月29日 (水曜日) 午後 02時21分
>うさぎ林檎さん
おお、なるほど。薄力粉をそのまま使うのと牛乳を混ぜると謂うのはウチのやり方とは少し違いますが、やはり粉→卵液→パン粉と謂う一般的な衣の作り方では不足だと感じている人が多いってことでしょうね。本文でも書きましたが、トンカツ屋の厨房を取材した番組で見ると、意外と練り生地に漬けてからパン粉を附けている店って多いみたいですから衣の作り方にも店毎の秘訣があるのではないかと思います。
ご紹介の店の、一度肉に直にパン粉を附けるやり方ってのは面白いですね。
>>昔、お肉屋さんの店先で揚げたてを売っていたトンカツが美味しかった気がするのは、記憶が美化されている点もあるでしょうが、揚げ油にラードを使っていたせいもあると睨んでいます。
これはオレも同感なんですが、肉屋は一斗缶単位でラードを扱っていますから、仲々あの真似は出来ませんね(笑)。勿論ラードオンリーではなくサラダ油と混合していると思いますので、油の分量の割合にも店毎のやり方がありそうですね。どうもオレは揚げ物にラードを使うと焦がしてしまいそうな気がするので、まだ試みたことがありません。
>>ベトナム料理にバンセオというやはり米粉を使った料理があるのですが、日本の上新粉を使うともたっとして、本場のパリッって感じが出ないのですね。同じ米粉でも、中粒米ではなくて長粒米かもしれない、とか・・・・・・・・。
米粉に限らず、粉物は奥が深いですねぇ(笑)。オレはモスチキンを喰ったことがないので現物の食感はわからないのですが、日本の美味い米を使った米粉は海外の米粉料理には向かないだろうとは思います。米自体の粘り気が全然違うので、米として美味いものが米粉としても美味いかと謂うと一概にそうも謂えないような気がします。
投稿: 黒猫亭 | 2009年7月29日 (水曜日) 午後 02時38分
>>下味が全体に廻ったら、まな板の上にラップに包んだ肉を載せ、擂り粉木などでひたすら叩いて伸ばす。伸ばしたら畳んでまた叩く。
この辺、ちょっとずぼらに書きすぎてわかりにくいが、勿論「ラップごと畳む」と謂う意味ではない。それではラップの挟み揚げになってしまう(木亥火暴!!)。
ウチではまず広げたラップの上に肉を置きラップを二つ折りにして叩き、肉が拡がったらラップを開いて、拡がった肉の真ん中くらいから再び二つ折りに畳むと謂う手順を繰り返している。肉が拡がってくるとラップからはみ出しそうになるので、これを縦と横で交互に繰り返すと好い。なので、ラップは気持ち多めにまな板一杯くらいに広げたほうがやりやすいだろう。
肉を叩く道具としては、専用の肉叩きよりは擂り粉木のような円筒状の棒が適しているようで、百均で買った擂り鉢セットに附いてきた二〇センチほどの小型の擂り粉木がかなり重宝である。突起や角があると肉やラップが断裂してしまうので、手頃な長さの円筒状で適度に重みがあるところが具合が好いわけである。
意外と台所にはその条件に合う道具はないもので、ウチにあるもので他にその条件に合致する道具と謂えば、「防犯用のテレスコピック特殊警棒」しかないが、そんなもので肉を叩くのはあんまり気持ちの好いことではない(木亥火暴!!)。
投稿: 黒猫亭 | 2009年7月31日 (金曜日) 午後 01時14分
こんにちは。
ポテトサラダを薄切りハムにはさんで半月型にしたものを揚げても美味しいですよ。小洒落た簡単コロッケで、おつまみになります。サラダにゆで卵やチーズを混ぜるのもお奨め。
今回トンカツレシピを幾つか調べましたが、つまり”柔らかくてジューシー”でなければいけないみたいですね。
固いモン好き、歯ごたえ無くちゃ嫌派の私は断固抗議しますね(誰に?)
歯ごたえあってジューシーじゃ何故いけないんだーーーーー!!!
”あっまぁーい(はぁと)”とか”やわらかぁーい(はぁと)”
なんて言ってるから親知らずが生えないだぞーー!(いや、私も二本しかないけど、しかも横向いてたから一本抜いちゃったし)
甘い=美味しい、柔らかい=美味しいってコトに何時からなったんだっ!
歯ごたえのないものなんて食べた気がしないでしょっ(豆腐は除く)!!
・・・・息切れしたので(バカだし)もう止めます。
ご紹介のカツは、応用無限大で美味しそうなので、今度真似してみます。
投稿: うさぎ林檎 | 2009年7月31日 (金曜日) 午後 05時29分
>うさぎ林檎さん
>>ポテトサラダを薄切りハムにはさんで半月型にしたものを揚げても美味しいですよ。小洒落た簡単コロッケで、おつまみになります。サラダにゆで卵やチーズを混ぜるのもお奨め。
お総菜感覚と謂うか、オードブル的で美味しそうですね。冷めてもスナック感覚で食べられそうなところが酒のアテに好さそうです。見た目としては洋風揚げ餃子みたいな感じですが(笑)、ポテトサラダなら温かくても冷えていても喰えるので、今度試してみようかと思います。
>>今回トンカツレシピを幾つか調べましたが、つまり”柔らかくてジューシー”でなければいけないみたいですね。
日本人独特の好みみたいですねぇ。欧米ではやっぱり肉は歯応えがあって当然だと言いますし、脂ではなく赤身の美味さを識ってこそ肉の美味さの神髄がわかるてなことを某美味しんぼでも言うてますね。
これはしかし、日本人の食生活の変遷を考えると、「堅いもの=野卑なもの、不味いもの」「柔らかいもの=上品なもの、美味いもの」と謂う発想になるのも仕方のないところがありますし、甘味を求めるのは洋の東西を問わずで、コーヒーをブラックで飲んでいるのは通ぶった日本人くらいですよね(笑)。
まあ所詮日本人は、本格的に肉を喰い始めて一〇〇年かそこらの歴史しかないんですから、魚肉と同じ感覚で柔らかい肉を有り難がるのも、肉食文化後進国として仕方ない部分と堪忍してやってください(笑)。
>>ご紹介のカツは、応用無限大で美味しそうなので、今度真似してみます。
本物のトンカツには及びませんが、豚肉らしい旨味はありますよ。豚肉の切り落としを重ねたカツは結構居酒屋なんかにありますが、あれとは違って繊維の方向がランダムですから、粗く叩いたつみれのような食感になります。豚小間でも、脂や筋の少ない赤身の多いところを使ったほうが美味いですね。
投稿: 黒猫亭 | 2009年7月31日 (金曜日) 午後 06時06分