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2010年6月19日 (土曜日)

包丁を買う

味も素っ気もないタイトルだが、昨日駅前のスーパーでセラミック包丁を衝動買いしてしまった。前から欲しいと思ってはいたのだが、最近仕事に弁当を持参しているので、サラダのレタスを刻むのにちょうど好いかと思って購入した。

弁当を作った経験のある人ならわかるだろうが、弁当箱と謂うのは一リットルくらいの大容量でも意外と狭かったり浅かったりするので、葉物野菜が嵩張ると結構中身が薄くなる。結球するレタスだと自然なアールが附いていて、小さく千切って入れたほうが嵩張らなくて好いのだが、手許が不器用なので不細工な出来になる。かと謂って普通のステンレス包丁で刻むと切り口が赤くなり、作ってすぐに喰うなら問題ないのだが、弁当のように時間を措いて喰うものだと甚だ見場が悪い。

セラミック包丁ならその心配はないので、かねてより一丁あると便利だとは思っていたのだが、何せ結構高い。ペティナイフくらいの小物でも三千円くらいするから、レタスのような金気を嫌う野菜にしか用途がないのでは不経済だと思っていたのだが、折柄の弁当マイブームに乗ってこの際思い切って買ってみたと謂う次第。

ためしにレタスを切ってみたが、たしかに切り口が赤くならない。その意味では当初の目的に適っているのだが、通常のステンレス包丁に慣れていると、切れ方が全然違うので結構危ないとか使いにくいと謂う感触を持った。

実際、大根やニンジンなどを刻むのはかなりやりにくかったから、レタスを刻む以外の用途には使わないだろうと思う(笑)。レタス刻み専用調理器具としてはやっぱり高く附いたと思う(笑)。

何処が違うのかと謂うと、普通のステンレス包丁なら、野菜に押し当てて力を入れると刃が喰い込んでからスーッと緩やかに切れていくが、セラミック包丁は喰い込みに少々余分な力が必要で、喰い込んだ瞬間にスパッと切れる。体感的にはステンレス包丁よりも切れ味が良いように感じるが、多分これはそうではないと思う。

つまり、ステンレス包丁の刃はミクロのレベルではそんなに鋭くなく鋸歯状になっていて、押し切りと謂うより鋸歯で挽き切る性格が強いから、刃を前後に動かしながら割合ゆっくり切れていくが、セラミック包丁は刃が滑らかで鋭く、刃を動かさなくても垂直にそのまま喰い込むので、殆ど押し切りの力だけで切れているのではないかと思う。

これはオレのような不器用者には結構使いにくい。挽き切るのであればゆっくりと調整しながら切ることが出来るが、瞬間的に押し切る形だと途中でコントロール出来ないから刃を当てた方向にそのまま切れる。厚みのあるものを切る場合、下手をすると不細工な角度が附いて切れたりしやすくなる。

この動き方だと微妙なコントロールが難しいから、たとえば野菜の皮剥きなんかにも向かないだろう。刃先を当てた方向にスパッと全部切れてしまうので、皮が繋がらないのである。また、この切れ方だと、失敗して指を切ったりするときも、刃の動きが速いのでかなり思い切り好く深く切れてしまいそうで怖い。

総じて、高いカネを出して買った割にはあまり好ましい感触を得られなかった。包丁の切れ味と謂う総合的な評価には、容易にコントローラブルであることが必須の要件なんだな、と更めて思った。

TVの料理番組では、見た目が白くて爽やかだからなのかセラミック包丁を使っている例が多いが、子供に料理をさせる番組なんかを観ていると、子供だと謂うことを差し引いても何だか手許が危なっかしいと謂う印象を覚えていた。

これまでは「あんまり料理に慣れていないんだろう」と思って気にも留めていなかったが、実際に使ってみると、たしかに子供が使う場合には実態以上に不器用に見えても仕方ないだろうと合点が行った次第である。子供の非力な腕力や未熟な技倆では、最初に刃先を当てた瞬間に切れ方が決まってしまうのだから、下手糞に見えても仕方がない。

結論としては、レタスの切り口が赤くなっても好いと謂う人なら、高いカネを出して買う必要はないだろうと思う(笑)。同じ価格帯で結構上物の金属包丁が買えるのだから、そちらを買ったほうが遙かに経済的だろう。

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コメント

> ミクロのレベルではそんなに鋭くなく鋸歯状になっていて、押し切りと謂うより鋸歯で挽き切る性格が強い

基本的にすべての金属製の刃物の原理はこれですね。刃物を研ぐ、と云う工程の最後には、「細かい鋸歯をつくる」ステップがあります。

セラミック包丁はあつかったことがないのですが、おっしゃるようなものであるとすると、基本的な刃物の原理とは違った(と云うか反したと云うか)ものであるわけで、それは違和感はあるでしょうね。

投稿: pooh | 2010年6月20日 (日曜日) 午前 09時15分

>poohさん

>>刃物を研ぐ、と云う工程の最後には、「細かい鋸歯をつくる」ステップがあります。

ノーノー、アナタはその後に砥石と刃物を仕舞いマ〜ス…と謂う昭和のかほりのするトクサツネタのアメリカンジョークはさて措いて(笑)。

>>基本的にすべての金属製の刃物の原理はこれですね。

われわれが日常的に使う刃物についてはその通りで、圧倒的に挽き切るタイプのものが多いですね。鋭利な刃物の代表格である日本刀も、ミクロのレベルで謂えば「物凄く精密なノコギリ」ですから、引かない限り本来の切れ味を発揮しません。蝦蟇の油売りの大道芸はそう謂う理屈ですね。

しかし、工学で謂う「刃物」と謂う概念はもうちょっと幅が広いようで、たとえば茹で玉子を糸で波状に切ると謂う調理法がありますが、この場合の糸も「刃物」にカテゴライズされるわけで、その原理は挽き切りではなく押し切りなんですね。料理関連で謂えば、クッキーの型抜き器なんかも押し切り型の刃物です。

また、剃刀とハサミの切削原理は大分違っているし、旋盤ダイスやタガネ、ノミ、ヤスリ、卸し金、変わったところではドリルや削岩機、紙を切断するプレス裁断機なんかも刃物なんですが、それぞれ普通の刃物とは切削原理が違います。応力の掛かり方や切れ方が違うんですね。

大雑把に謂うと、鋸歯によって掻き取りながら切るタイプと、タガネのように喰い込みながら切断するタイプに別れます。どっちにもカテゴライズするのが微妙なものとしては「絞り切る」なんてのがありますね。「ブギーポップ」に出てくる鋭利なワイヤーで切断する武器とか、手術器具なんかのシャッター型の刃物ですね。

ハサミは基本的に後者のタイプで、両側から押し切ると謂うのが基本動作ですが、両方の刃が角度を狭めながら少しずつ重なる領域が増えていくので挽き切りの動作も入っています。その証拠にハサミの開きを鋭角に保って間に紙を挟んで滑らすとちゃんと切れますし、ハサミで紙を切ると「ジョキジョキ」と謂う切り掻きの音がします。

基本的にすべての刃物は堅い構造物が鋭角になっていますので、押し切りでも或る程度切断出来ますが、挽き切りはそれに鋸歯の切り掻きを組み合わせ、そちらを主要な切削原理に据えたものだと謂えるんじゃないでしょうか。

>>セラミック包丁はあつかったことがないのですが、おっしゃるようなものであるとすると、基本的な刃物の原理とは違った(と云うか反したと云うか)ものであるわけで、それは違和感はあるでしょうね。

概ね仰る通りですが、上記を踏まえて厳密に謂うと、「外見的・直観的には挽き切りタイプの刃物なのに、その切削原理が押し切りタイプだから動作上の違和感がある」と謂うことですね。で、普通の包丁術は挽き切りを前提に考えられているので、押し切りタイプの包丁は同じ要領では扱えないと謂うことになります。

で、セラミックの刃物と謂えば、創作物上の最もポピュラーなアイテムはナウシカのセラミック刀と謂うことになるでしょうけど(笑)、普通の剣術は撫で切りもしくは刺突前提になっていて、押し切りタイプの力の掛け方なら中国で謂う「刀術」みたいな打撃と切断を兼ねたような武術になるでしょうが、金属より遙かに軽いセラミックでは打撃には向かないし、剣術・刀術でナタのような切断型の原理に基づいているものは武器に重みがないと扱いが難しい。

劇中の描写では切れ味が鋭いだけで普通の剣みたいな扱い方になっていましたが、工学的に考えるとそれはあり得ないわけで、セラミックで刀剣を作って武器にするなら一番効率的な武術は刺突型の体系になるんじゃないか、なんて思いました。

セラミック刀を普通の刀剣みたいに扱っても、おそらく殺傷力は低いんじゃないか、それ以前に扱い方が凄く難しいんじゃないか、なんて思う一方で、刺すと謂う用法なら押し切りの動きがメインになるし、血糊の付着で切れ味が鈍ることがない分金属よりも優れているでしょう。また刺突の動きには金属の重みはかえって邪魔になりますから、軽いことが体技上有利になりますし。

…と謂うことで、いつの間にか話題がc_cさん向きになってしまいましたので、この辺にて(笑)。

投稿: 黒猫亭 | 2010年6月20日 (日曜日) 午前 11時33分

レタスを切るだけでしたら、プラスチック製のその名も「レタスナイフ」というのをチリスで作っています。
http://www.zyliss.com/produkt_detail.cfm?lang=en&produkt_id=486
日本では、売っていないのかと、検索しましたら、こんなのがありました。
http://item.rakuten.co.jp/anet-shiodome/10001248/
ちょっと、バッタモンの気配もしますが、理屈の上では、同じはずです。

投稿: mimon | 2010年6月20日 (日曜日) 午後 11時28分

>mimonさん

>>レタスを切るだけでしたら、プラスチック製のその名も「レタスナイフ」というのをチリスで作っています。

うおお、オレの三千円の出費は何だったのか、と頭を掻きむしりたくなります(笑)。

見た目で言うと日本製のバッタ物のほうが使いやすそうな気がする辺り、何だか微妙な気分になります。どちらも切削原理としては、わかりやすい鋸歯が附いていますから挽き切り型なんですね。

セラミック包丁は硬度を保ちながら物凄く鋭利な薄刃に出来るところが押し切りに向いているわけですが、こちらのほうはプラやアクリルで硬度が劣る分鋸歯型にして挽き切る形にしているみたいですね。レタスのような繊維質の食材は、やっぱり押し切るよりも挽き切ったほうが好いように思います。

投稿: 黒猫亭 | 2010年6月20日 (日曜日) 午後 11時53分

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