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2010年8月 6日 (金曜日)

政治的配慮と謂うやつなのか無知なのか

今朝めざましテレビを観ていたら、気になるニュースがあった。ホメオパシーの実態について日本助産師会が調査に乗り出したと謂う例のK2シロップの一件に絡んだ動きを報ずるもので、ニュース自体については別段意外でも何でもなかったのだが、気になったのはそのアナウンスの仕方である。

「ホメオパシー」と謂う一般の認知がまだ薄い用語を説明する際にキャスターが「科学的根拠はよくわかっていない」と謂うような言い方をしたのだが…いやいやいや、「科学的根拠が『ない』」ことについてはよくわかっていますから(笑)。

しかも、ホメオパシーの無根拠性を素人レベルでも推測し得るヒントとなる「元の分子が一分子も残っていないこと」についてはまったく触れておらず、「毒性物質を極度に薄めた」と謂うような言い方をしていたところも気になった。

念の為に、この件を報じたasahi.comの記事を転載する。

「ホメオパシー」トラブルも 日本助産師会が実態調査

「ホメオパシー」と呼ばれる代替療法が助産師の間で広がり、トラブルも起きている。乳児が死亡したのは、ホメオパシーを使う助産師が適切な助産業務を怠ったからだとして、損害賠償を求める訴訟の第1回口頭弁論が4日、山口地裁であった。自然なお産ブームと呼応するように、「自然治癒力が高まる」との触れ込みで人気が高まるが、科学的根拠ははっきりしない。社団法人「日本助産師会」は実態調査に乗り出した。

 新生児はビタミンK2が欠乏すると頭蓋(ずがい)内出血を起こす危険があり、生後1カ月までの間に3回、ビタミンK2シロップを与えるのが一般的だ。これに対し、ホメオパシーを取り入れている助産師の一部は、自然治癒力を高めるとして、シロップの代わりに、レメディーと呼ぶ特殊な砂糖玉を飲ませている。

 約8500人の助産師が加入する日本助産師会の地方支部では、東京、神奈川、大阪、兵庫、和歌山、広島など各地で、この療法を好意的に取り上げる講演会を企画。2008年の日本助産学会学術集会のランチョンセミナーでも、推進団体の日本ホメオパシー医学協会の会長が講演をした。同協会のホームページでは、提携先として11の助産院が紹介されている。

 日本助産師会は「問題がないか、実態を把握する必要がある」として、47支部を対象に、会員のホメオパシー実施状況やビタミンK2使用の有無をアンケートして、8月中に結果をまとめるという。

 また、通常の医療の否定につながらないよう、年内にも「助産師業務ガイドライン」を改定し、ビタミンK2の投与と予防接種の必要性について記載する考えだ。日本ホメオパシー医学協会にも、通常の医療を否定しないよう申し入れた。

 助産師会の岡本喜代子専務理事は「ホメオパシーを全面的には否定しないが、ビタミンK2の使用や予防接種を否定するなどの行為は問題があり、対応に苦慮している」と話している。

 助産師は全国に約2万8千人。医療の介入を嫌う「自然なお産ブーム」もあり、年々増えている。主に助産師が立ち会うお産は、年間約4万5千件に上る。

 テレビ番組で取り上げられたこともある有名助産師で、昨年5月から日本助産師会理事を務める神谷整子氏も、K2シロップの代わりとして、乳児にレメディーを使ってきた。

 取材に応じた神谷理事は「山口の問題で、K2のレメディーを使うのは、自重せざるを得ない」と語る。この問題を助産師会が把握した昨年秋ごろまでは、レメディーを使っていた。K2シロップを与えないことの危険性は妊産婦に説明していたというが、大半がレメディーを選んだという。

 一方で、便秘に悩む人や静脈瘤(りゅう)の妊産婦には、今もレメディーを使っているという。

 ホメオパシーをめぐっては英国の議会下院委員会が2月、「国民保健サービスの適用をやめるべきだ。根拠無しに効能を表示することも認めるべきではない」などとする勧告をまとめた。薬が効いていなくても心理的な効果で改善する「偽薬効果」以上の効能がある証拠がないからという。一方、同国政府は7月、科学的根拠の乏しさは認めつつ、地域医療では需要があることなどをあげて、この勧告を退ける方針を示している。

 日本では、長妻昭厚生労働相が1月の参院予算委で、代替医療について、自然療法、ハーブ療法などとともにホメオパシーにもふれ、「効果も含めた研究に取り組んでいきたい」と述べ、厚労省がプロジェクトチームを立ち上げている。(福井悠介、岡崎明子)

     ◇

 〈ホメオパシー〉 約200年前にドイツで生まれた療法。「症状を起こす毒」として昆虫や植物、鉱物などを溶かして水で薄め、激しく振る作業を繰り返したものを、砂糖玉にしみこませて飲む。この玉を「レメディー」と呼んでいる。100倍に薄めることを30回繰り返すなど、分子レベルで見ると元の成分はほぼ残っていない。推進団体は、この砂糖玉を飲めば、有効成分の「記憶」が症状を引き出し、自然治癒力を高めると説明している。がんやうつ病、アトピー性皮膚炎などに効くとうたう団体もある。一方で、科学的な根拠を否定する報告も相次いでいる。豪州では、重い皮膚病の娘をレメディーのみの治療で死なせたとして親が有罪となった例や、大腸がんの女性が標準的な治療を拒否して亡くなった例などが報道されている。

脚注でも「一方で、科学的な根拠を否定する報告も相次いでいる。豪州では、重い皮膚病の娘をレメディーのみの治療で死なせたとして親が有罪となった例や、大腸がんの女性が標準的な治療を拒否して亡くなった例などが報道されている。」として、少し慎重な言い回しではあるが、科学的根拠が「ない」こと、「分子レベルで見ると元の成分はほぼ残っていない」こと、「愚行権」の範疇には収まりきらない他者被害や取り返しの附かない事例の深刻さに触れている。

まあ、CXの情報番組制作者に科学リテラシーを期待するのも虚しいが、こう謂う報道を視ると、影響力の大きい公の報道機関にホメオパシーの何たるかを識っている人間がほぼ存在しないと謂う事実にちょっと怖気をふるってしまう。

しかし、「テレビ番組で取り上げられたこともある有名助産師で、昨年5月から日本助産師会理事を務める神谷整子氏も、K2シロップの代わりとして、乳児にレメディーを使ってきた。」ってのには参ったね。ダメじゃん。

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コメント

おはようございます。

出しゃば林檎ならぬうさぎ林檎でございます。
今回の件では朝日新聞は腐っても(あ、いやいや長野記者さんゴメンなさい)大新聞なんだな、というかメディアの影響力を実感しています。長野記者さんは取材を継続する意志をお持ちだそうなので何とか頑張って頂きたいです。ホメオパシーの問題が周知されるだけでも価値がありますし。
で、
>K2のレメディーを使うのは、自重せざるを得ない
ここで私はぶちぎれました。"軽はずみな行動を慎む"ってどーゆうことです?
>一方で、便秘に悩む人や静脈瘤(りゅう)の妊産婦には、今もレメディ
>ーを使っているという。
懲りてないんですね、認識を改めていないんですね、ほとぼりが冷めれば良いと思ってますね。医療従事者が病名を特定してレメディーを処方している行為の意味を全然理解してませんね。

歴史から見れば明らかなことですが、贄が献げられなければ世の中が動かなかったのは残念です。と謂っても予断を許す状況になったわけではないので、必要な時は今のところまだ出しゃばろうかなとは思っています。

投稿: うさぎ林檎 | 2010年8月 6日 (金曜日) 午前 09時37分

こんにちは。

ビタミンKの投与をレメディで代用したために、赤ちゃんの命が失われたのは実に腹立たしいことです。なす術も無く出血で亡くなっていく赤ちゃんを助けるために、どれだけのヒトがどれだけの努力を重ねたと思ってるんだ。それを踏みにじる奴に子供の命を預かる資格などない、と断言したい。

…医療ネグレクトという形でホメの回りには実は死屍累々なんじゃないかと思うとぞっとします。親が取り込まれる入り口が出産だと、延々と子供に医療ネグレクトの災いが降りかかる可能性もあり、この山口の事件の行方は、今後の日本の医療体制に大きな意味を持っている、と思います。

通常医療から悩めるヒトを遠ざけ、予防接種を否定して社会の中の弱者に災いをもたらすホメオパシー、無邪気に広めているヒトは自分の行為が他人の命を危険に晒していると、認識していただきたいものです…が、何か起これば「その子の寿命だった」「前の治療が悪かった」とか言いぬけやがるんですな、この手合いは。

ちょっと冷静になれないくらい腹の立つ事件です、はい。

投稿: shof | 2010年8月 6日 (金曜日) 午後 08時40分

いや、なんかCXの報道のしかたのほうがマスメディアの対応としては自然に見えるのは、それはそれでぼくの側にあるバイアスなんでしょうね。

菊池誠によると、今回朝日新聞はそうとう周到な準備をして報道に臨んだようです。けっこうな肚の据わりかたですよね。

投稿: pooh | 2010年8月 6日 (金曜日) 午後 09時50分

>うさぎ林檎さん

>>出しゃば林檎ならぬうさぎ林檎でございます。

この件に関しては、オレの識る範囲だけでも精力的に情報提供に努めておられて、議論の活性化に貢献しておられましたね。それが「出しゃばり」なら、今後もどんどんいろんなところに出しゃばっちゃってください(笑)。

>>今回の件では朝日新聞は腐っても(あ、いやいや長野記者さんゴメンなさい)大新聞なんだな、というかメディアの影響力を実感しています。

今回のエントリでは、情報らしい情報はこの記事の転載だけで、ホントに実のないテキストで申し訳ないんですが(笑)、グーグル先生の検索で一発目に出てきた記事が申し分のないものだったので、そのまんまコピペしてしまいました(笑)。

poohさんが触れておられるように、朝日が腰を据えてこの件に取り組む姿勢を持っているのであれば、CXの報道姿勢よりも朝日の姿勢のほうが重要なネタだったと謂うことになりますかね(笑)。

>>ここで私はぶちぎれました。"軽はずみな行動を慎む"ってどーゆうことです?

同感です。「山口の事件で」「自重せざるを得ない」ってどう謂う意味だよ、と。こう謂う事件がなかったら「自重」するつもりはないのかよ、と。この場合、重要なことは「K2シロップを与えないことの危険性」を「妊産婦に説明していた」かどうかではないはずなんですね。

すでに多くの議論で指摘されているように、その「危険性」は母親自身ではなく母親に保護監督責任がある他者である子供に及ぶのですから、母親にはその危険性を選択する権利なんかないはずなんですから。

謂ってみれば、レメディー、ホメオパシーと謂うのは「無意味なリスク」を伴う選択肢であって、「山口の事件」では無意味であるにも関わらずそのリスクが剰りに重大だから問題が表面化したわけです。

妊娠・出産に関するプロの職業者である助産師が、その種の無意味なリスクを積極的に奨めるってどう謂うこと?と謂うのが問題の核心であって、助産師が奨めなかったらホメオパシーなんか識らなかった人がたくさんいるわけですよね。で、その神谷理事とやらは、「K2シロップを与えないこと」に重大な「危険性」があることを識っていながら、その選択肢を提案して妊産婦に選択を奨めているわけですよね。

で、山口の事件のように「妊産婦に十分な説明なくレメディーを使用する」と謂うような「不正」が起こったから、今後は「自重する」と謂うことですか。要するに、妊産婦の「自己責任」に帰す手続、つまり「ホメオパシー施術者が責任を回避出来る手続」が踏まれなかったから問題だ、と謂う認識ですね。

K2シロップを与えないことで、科学的には極自然な結果として乳幼児が死亡したことそれ自体ではなく。

その「危険性」を母親に十分説明して、母親の責任で選択させれば、そのような結果がもたらされても問題ではない、と謂う認識ですよね。妊娠・出産のプロが「かなりの高確率で子供が死ぬ可能性」のある選択を、ちゃんと説明さえすれば母親に奨めても好いと考えていると謂うことが問題なわけです。

>>医療従事者が病名を特定してレメディーを処方している行為の意味を全然理解してませんね。

そう謂うことなんですよね。

助産師と謂う職業って、ちゃんとした医療従事者ではなく、裏町の呪い屋かウィッチドクターの親戚なんですか、と謂うのが問題なんです。職業の正当性の根幹を揺るがす大問題なんですよ。職能団体が挙げてホメオパシーを広めることで、自らの職域全体の職業的信頼性を脅かしているのだと謂う認識がまるっきり欠如している職能団体に、何の存在意義があるんですかねぇ。

結局、今回日本助産師会が実態調査に乗り出したと謂うのは、「助産師に任せると子供の命が危ない」と謂う風評が流れると大打撃だからでしょう。所詮は経営上の問題に過ぎないわけです。

助産師は正常分娩しか扱えないわけですから、異常で危険のある場合は医師に任せるわけで、その「正常」性に安心して、ちょっとくらいインチキなことをしても大丈夫だろう、どうせ「おまじない」なんだから、と謂う気のゆるみがホメオパシーなんかを選ばせてしまうわけですね。

投稿: 黒猫亭 | 2010年8月 7日 (土曜日) 午後 10時25分

>shofさん

>>なす術も無く出血で亡くなっていく赤ちゃんを助けるために、どれだけのヒトがどれだけの努力を重ねたと思ってるんだ。それを踏みにじる奴に子供の命を預かる資格などない、と断言したい。

どらねこさんのところのゼンメルワイスの記事を想い出してしまいます。

結局助産師の間でホメオパシーが広まったのは、助産院の経営と謂う非常に下世話な事情が絡んでいて、経営戦略上の一種の付加価値として「自然なお産」とか「自然な免疫力」と謂うようなお題目が唱えられているわけですよね。

それは助産師が介助する「正常な経過の出産」においては、単なる「心の贅沢」の一つと謂えるでしょうが、ホメオパシーのような通常医療と本質的には相互排除的な関係にあるはずの思想を導入するのは、顧客の欲する贅沢を提供すると謂う域を超えた自殺行為としか思えません。

>>親が取り込まれる入り口が出産だと、延々と子供に医療ネグレクトの災いが降りかかる可能性もあり、この山口の事件の行方は、今後の日本の医療体制に大きな意味を持っている、と思います。

それまで何も識らなかった人々にホメオパシーを教え込むことの罪深さを何も考えていないのだとしたら、そしてそれが「おまじないだから罪がないだろう」みたいな甘い料簡で選択された「商売の方便」なのだとしたら、それはニセ科学問題で扱われている悪徳業者と何ら変わりがありません。もっと突っ込んで「ホメは商売としてボロい」みたいな認識があるのだとしたら、もう立派な悪徳業者ですね。

>>何か起これば「その子の寿命だった」「前の治療が悪かった」とか言いぬけやがるんですな、この手合いは。

うさぎ林檎さんへのコメントで述べた通り、神谷理事は「母親の自己責任にする手続を踏まなかったこと」が問題だと考えているようですよ。助産師が責任を被るような形でレメディーを処方したことが問題で、その結果「助産院はヤヴァい」みたいな風評が立つと助産院がバタバタ潰れるから問題だ、みたいな認識みたいですね。

投稿: 黒猫亭 | 2010年8月 7日 (土曜日) 午後 10時26分

>poohさん

>>いや、なんかCXの報道のしかたのほうがマスメディアの対応としては自然に見えるのは、それはそれでぼくの側にあるバイアスなんでしょうね。

バイアスと謂うか、べき論と実態論の違いなんでしょうね(笑)。

マスメディアにはそもそも各領域の専門家なんかいないわけで、まあ、いろんな分野の専門家とか顧問の先生を網羅していたらキリがないってこともわかりますね。なので、個別の対象については外部の専門家から聴き取ってきた情報を紹介して「エライ人はこんなふうに言うてます」と伝えるのがマスメディアの機能です。

ですから、基本的にマスメディアは報道する専門的領域の問題については素人であるのが当たり前ですから、どうしても理解の甘いところや不正確な部分が出てくると謂うのは実態として理解の範疇ではあります。

また、poohさんは多分マスメディアの「ひも付き」みたいな部分も想定して仰っているのかな、と思いますが、ブコメでも「マスメディア自体がインチキ商売の片棒担いでいるから、ハッキリ根拠レスと断言出来ないんじゃねーの」と謂うようなご意見が多いですよね。まあ広告料で成り立っている私企業ですから、公器性だけで飯は喰えないわけですしね。

CXはその辺についての潔癖性は完全にユルユルのザルですから、さんま大教授でもニセ科学を散々採り上げたりしていますし、最近では「ホンマでっかTV」みたいな「これは出演者がそう言っているだけの話なので、真に受けないでね」と開き直ってヤバ目な面子に放談させているくらいで、ハッキリ無根拠と明言しちゃったらいろいろまずいんでしょうね。

投稿: 黒猫亭 | 2010年8月 7日 (土曜日) 午後 10時27分

こんにちは。

お行儀よくしているのは骨が折れます(笑)。とか言っといて昨日琴子ちゃんのお母さんのところの吉村教信者書き込みにすっかり逆上してしまったわけですが。

ふと気付けば、私はホメオパシーのことを3年以上考えているんです。好きでもないことをずっと調べたり考えているんですから、我ながらどういうこっちゃと思いますね。多分グロリア(オーストラリアで父・ホメオパス医による医療ネグレクトで死亡)、山口県の名前も知らない赤ちゃん、琴子ちゃん(原因はホメじゃないけど)達の存在が私をずっと引き留めているんです。よく判らないけど、それは正義とは違う感情だと思います。

現在は、私よりもずっと遥かに賢い論客の方々が科学・医学・法律と多角的に論じてくださっていますから、私は議論を効率化できるような情報を提供する部分が手伝えればいいかな?と思っています、皆様の足を引っ張らないようにしないとね。

投稿: うさぎ林檎 | 2010年8月 8日 (日曜日) 午前 11時46分

こんにちは。
うさぎ林檎さんが各所でご紹介下さる日本のホメオパシー団体の言動は、「危険」の一言に尽きると思います。

朝日新聞の日刊紙の記事は、ラテ欄のすぐ次の社会面トップに掲載されました。家庭欄や科学・医療欄ではなかったあたりが今までとは違うと思います。信者は無理でも信者未満の人が「あれ?」と思うのには効果的かと。

…自然礼賛ってのには、辟易しています。
自然に任せてたら、胎児も妊婦も産婦も新生児も、余りにも簡単に命を落としていた時代に逆戻りなんですが、それでいいのかと。そんな事は助産師なら教育で叩き込まれているだろうに。

自然礼賛を引っ込めない人ってのは、実は「強者」なんだなあ、と感じます。で、そっから零れた「弱者」は死んでも良いと(極論ですが)。自分が「弱者」の立場になることなど、想像してないのか、と。

「本場」である英国では、ホメオパシーは「命に関わる病気に使われるべきじゃない」ってのが一応のコンセンサスらしいのに、現在の日本のホメオパシー有力団体はそれを完全に踏み外している。

朝日新聞のGJとしては、be on Saturday版(別刷り)の記事「問われる真偽 ホメオパシー療法」に

「ここまで薄めると毒の物質は、事実上もう入っていないが「薄める時によく振ることで、毒のパターンが水に記憶される」と、協会会長の由井寅子さんは解説する。」
「「自己治癒力が病気と闘っている時に現れるのが病気の症状。西洋医学は症状を緩和するが、治癒はさせない」。ホメオパシーで治せる病気は精神病から皮膚病まで多種多様で、がん治療も可能かと聞くと、由井さんは「そうです」と力強く答えた。」

との文言を載せたこと。
オカルトめいた製法の"レメディ"が「重い病気に効く」と標榜している傍証(公には標榜しないよう注意してますが、本音はココや)ですね。由井某さん率いる所の日本のホメオパシーの「うさんくささ」を表現した優れた書き方かとw 
(それでも引っかかる人はいますが、「変」と思う人もいることに期待)
朝日新聞にはこれからも頑張っていただきたいものです。


投稿: shof | 2010年8月 8日 (日曜日) 午後 01時23分

>うさぎ林檎さん

>>ふと気付けば、私はホメオパシーのことを3年以上考えているんです。好きでもないことをずっと調べたり考えているんですから、我ながらどういうこっちゃと思いますね。

それはやはり、ホメオパシーが今の社会を少しずつ蚕食していて、うさぎ林檎さんやオレが普通で当たり前でそうあるべきだと思っているような、平凡な世界の在り方を着実に蝕んでいるからじゃないですかね。

われわれは、いろいろ失敗を繰り返しながらも今現在何とか自分の平凡な日常を楽しむ術を覚えた年齢域だと思うんですが、その平凡な日常は、誰かお上のエライ人が天下りに護ってくれるものではなく自分自身で防衛しなければならないのだし、場合によっては全然楽しくない闘争によってそれを勝ち取らねばならない場合もある、と謂う責任をも引き受けているわけですよね。

>>多分グロリア(オーストラリアで父・ホメオパス医による医療ネグレクトで死亡)、山口県の名前も知らない赤ちゃん、琴子ちゃん(原因はホメじゃないけど)達の存在が私をずっと引き留めているんです。よく判らないけど、それは正義とは違う感情だと思います。

一種の生活防衛なんですよね。

うさぎ林檎さんが挙げられたような事例が、何ら罰されることなくしれっと普通に行われているような社会を生きることは、腐ったどぶ板の上を歩くようなものです。自分には関係のないこととして視て視ぬふりをしていると、いつか自分や自分の大切に思う人の身の上に取り返しの附かない被害が降り懸かってきます。

そう謂った実際的な脅威の問題と謂う以前に、「それはそうあるべきではない」と謂う強い感情は、おそらく正義よりはもっと実感的でもっと切実な、世界に対する基本的信頼性に関する問題ではないかと思います。

投稿: 黒猫亭 | 2010年8月 9日 (月曜日) 午前 10時11分

>shofさん

>>うさぎ林檎さんが各所でご紹介下さる日本のホメオパシー団体の言動は、「危険」の一言に尽きると思います。

ホメオパシーが大きな顔で横行することが許されていると、われわれはわれわれの平凡な日常を楽しめないですし、その平凡な日常と窮めて近い地続きの場所で罪もない子供が理不尽に命を落としていたり、子供が死ぬ可能性を識りながら母親にその選択を巧妙に売り込んで、いざとなれば「選んだのはあなたですよ」といけしゃあしゃあと嘯くような卑劣な人間がうようよいたりすれば、それはもう平凡な日常でも何でもない。一種の非常事態ですよね。

これは非常に極端な意見ではありますが、助産師と謂う職域全体に対して指導的立場に立ち大きな影響力を持つ日本助産師会と謂う職能団体がこれほどダメであるなら、そして、たとえば現政権がホメオパシーを「貧乏人のおまじない」として一定範囲で許容する考えなら、それこそ「助産院はヤヴァい」と謂う雪崩れを打つような風評被害で、助産師の職域が壊滅的な打撃を蒙っても仕方がないのではないかとまで考えています。

オレ以上に近視眼的で短絡的なのは、ホメオパシーと謂う「インチキなおまじない」に商売上の活路を見出した助産師と謂う職域全体だと思いますので、いっぺん存亡の危機に立たされてみろ、と考えています。勿論、良心的で有能な助産師もたくさんいるのでしょうけれども、これはもうそう謂う次元の問題ではないです。

産婦人科医療との差別化を打ち出す為に助産師の職能団体が全体的な方向性としてホメオパシーを選択したのであれば、一般的な助産院とはホメオパシー蔓延の温床に外ならないわけで、それはつまり社会的には有害窮まりない悪意的情報の発信拠点と謂えるでしょう。

神谷理事のようなホメオパシーの擁護者が日本助産師会と謂う代表的職能団体の多数派であるのなら、助産師と謂う職掌は社会の平穏と対立的な存在として存亡の危機に立たされるべきなのだし、その場合、個人としては有能だったり良心的だったりするような職業者をも巻き込んで一蓮托生で社会から排除されていく、それは当たり前の話です。

どんな職域も、社会の中に位置する以上、社会に提供し得るメリットと社会に及ぼすデメリットのバランスの上にしか成立し得ないものですが、この場合、助産師と謂う職業にどんな優れたメリットがあるとしても、デメリットが遙かにそれを上回る状況であると思います。

であれば、そのデメリットを排除する為にメリットが喪われたとしても、それは緊急避難的な意味での全体収支が合っていると謂うことになります。

>>自然礼賛を引っ込めない人ってのは、実は「強者」なんだなあ、と感じます。で、そっから零れた「弱者」は死んでも良いと(極論ですが)。自分が「弱者」の立場になることなど、想像してないのか、と。

その辺については、こちらでも以前書いたことがあります。

http://kuronekotei.way-nifty.com/nichijou/2009/12/post-1800.html

仰る通り、自然礼賛と謂うのは強者の論理であって、人類文明が本質的に弱者救済を基本原理として発展してきたことに逆行する反動的思想だと思います。

自然礼賛…この用語の用い方について、前掲エントリでは「正確性を欠く」と謂うご指摘を戴いたこともありますが、とりあえず「所謂行き過ぎた自然礼賛」の意味であると謂う文脈で話を続けますと(笑)、これは突き詰めて謂えば「弱者は死ね」と謂う結論にしかならないんですね。

所詮はそこまで突き詰めて表現されていないから口当たりが良いように見える思想に過ぎないわけで、医療の分野にせよ食の分野にせよ、この種の自然礼賛が意味しているのは「弱者は死ぬべきだ」と謂う極端な主張なんですね。たとえば感染パーティーとか莫迦なことを主張しているような徒輩は、その過程で現代医療が救済してきたような少数の弱者が死ぬべきだと主張していることになります。

「自然な免疫力」と謂う言い方は、謂ってみれば「普通でない人間は生き延びるべきではない」と謂う考え方に外なりません。文明や自然科学や現代医療が救済してきたような人々、今よりも世界がもっと過酷だった時代には到底生き延びることが出来なかったような人々は生きるべきではない、と謂う思想に基づいた考え方です。

ただし、前掲エントリで論じたように、この場合の「強者」と謂うのは飽くまで進化論的強者の謂いに過ぎないわけですから、「勝者=勝ち組」は飽くまで結果論で決定されるに過ぎません。結果的に生き延びた者が「強者」だと謂うだけですから、個体の生存率を爆発的に底上げした文明や自然科学を否定して「自然な免疫力」とか言い出すのであれば、結果論的な過酷な淘汰を肯定し受け容れると謂うことになります。

その場合、たとえば自分の大事な子供が死んでしまったとしても、それは単に「運が悪かった」と謂うだけの話になりますし、その死に意味なんかありません。普通の意味で他者に先んじて生き延びられるだけの潜在的能力を具えていたとしても、つまらない偶然によって死んでしまう確率は高いのだし、そう謂う気まぐれで冷淡な世界律を肯定し受け容れると謂う意味になります。

>>「本場」である英国では、ホメオパシーは「命に関わる病気に使われるべきじゃない」ってのが一応のコンセンサスらしいのに、現在の日本のホメオパシー有力団体はそれを完全に踏み外している。

何というか、ホメオパシーにしろ、たとえば児童ポルノ問題にしろ、海外の思想が国内に輸入されてローカル化すると、何故か原始退行した尖鋭な土俗に堕落すると謂う印象がありますね(笑)。

周回遅れで外部から情報や思想を吸収する場合、これまでに試みられた先行者のコストをスキップして美味しい果実だけいいとこ取り出来そうなものなんですが、何故か必ず同じ過ちを繰り返したりもっと非道い被害がもたらされたりすると謂うのは、どうにかならないものでしょうか。

政治の分野の新自由主義政策なんてのは、海外ではすでに破綻しきったタイミングで本格的に実現したわけですし、海外の事例をまったく他山の石とすることなく、同じ破綻の道筋を辿ったと謂うのは愚かの一言に尽きます。

投稿: 黒猫亭 | 2010年8月 9日 (月曜日) 午前 10時11分

こんばんは。

日本助産師会は本当に駄目かもしれません、他人事(ホントに他人事)ながらリスクマネジメントがどうなっているのか、さっぱり理解できません。
日本助産師会の機関誌8月号において
http://www.midwife.or.jp/magazine.html

>特集:「産科における代替医療を考える
もうここで死亡フラグが立っていますが

>マドレボニータの妊婦向けヘルスケアホメオパシー・・・渡辺愛
愕然とします、自分達で自分に止めを刺してどうする。

この渡辺愛助産師が所属する「ねりじょはうすLuna」にはホメジャ認定ホメオパスが2人もいてるわけです。しかもよりにもよってそのうちの1人は由井寅子総裁とバース講演と称してホメオパシーを妊婦にせっせと広めていた鴫原操助産師。
鴫原氏は亡くなったと聞いていた(そういうBlog記事も見た)のですが、「ねりじょはうすLuna」のサイトには何事もなかったように写真が貼られていますし、生死についてのコメントも見当たりません……コワッ。くも膜下出血という噂でしたから、ご存命なのかもしれません。まぁホメで治るわけ無いのでオフレコ扱いされている可能性はあります(酷い集団)。

マドレボニータ(スペイン語で「美しい母」の意)というNPO法人(あぁ気持ち悪いネーミングセンス)のフィルターを通せばバレないとでも思ってたんでしょうか。
このマドレボニータにしたところで、代表吉岡マコ氏の経歴が
「東京大学文学部美学芸術学卒業、同大学院生命環境科学科で運動生理学を学びつつ、大学院の外ではヨガ、ピラティス、東洋医学、ダンスセラピー、骨格調整、オーラソーマ、レイキ、など、数々のヒーリングアーツを興味の赴くまま学ぶ」
とかで、ダメダメフラグ&鳥肌が立ちまくりなんですが………。

いやなんかもう日本助産師会……気持ち悪いデス。道で会ったら目を逸らすレベルなんですけど………バ(以下自粛)。

投稿: うさぎ林檎 | 2010年8月 9日 (月曜日) 午後 06時11分

連投失礼。
鴫原氏はやっぱりお亡くなりになっていました。「ねりじょはうすLuna」はなんでその辺をキッチリ告知していないんでしょうね?
この助産院、妊婦さん向けお教室に"ホメオパシー"はないんですけど、"マザークラス"のところに貼ってある画像にはホメオパシーと書かれています。他にマクロビもやっているみたいだし、何にも知らずに普通の助産院と思ってやってくる妊婦さんはあれやこれやと布教されちゃうと思いますね。妊娠・出産が違う意味でサバイバル化してます。

投稿: うさぎ林檎 | 2010年8月 9日 (月曜日) 午後 06時36分

>うさぎ林檎さん

すっかりお返事が遅くなりました。

>>日本助産師会は本当に駄目かもしれません、他人事(ホントに他人事)ながらリスクマネジメントがどうなっているのか、さっぱり理解できません。

偶々目にした報道ばかり責めても意味がないし、TVの報道ではそう謂うニュアンスになっても仕方がない部分はありますが、普通は「ホメオパシーでトラブルが起こって日本助産師会が実態調査に乗り出した」と謂う話だけ聞くと、助産師の間でボトムアップ的に何やらよからぬことが流行していて、指導的な立場にある職能団体がその状況を問題視しトップダウン的に綱紀粛正の調査に乗り出した、と謂う意味にとれますよね。

ところが、正確な実態としてはそのよからぬこと自体が日本助産師会のトップダウンで助産師の間に拡がっているわけで、山口の事件は起こるべくして起こった当然の結果に過ぎないわけですね。

日本助産師会が推奨しているホメオパシー療法と山口の事件の違いは、母親の承諾を得て行われたか否かと謂う点しかなく、たしかにこれが通常医療ならリスクの説明の有無と謂うのは大きな違いではあります。しかし、山口の件でもしもK2レメディーについて説明が行われていて、母親が納得して使用に同意していたら、子供が死んでも助産師の責任にならなかったかと謂えば、そんな莫迦なことはないわけで(笑)。

これが無責任な素人のやったことならともかく、国家資格の医療従事者が「自分の奨めた非公然の療法と科学的に明白な因果関係のある原因」で子供が死んだ場合、「自分が奨めたけれど、母親が同意したんだから母親の自己責任です」と謂う言い分が通ると考える時点でアタマおかしいですね。

母親は素人で助産師は専門家、そして、素人が提案して専門家が諾否を判断するわけではなく、専門家の助産師のほうからレメディー投与を提案しているんですから、そもそも専門知識や職業的権威のレベルで対等な関係ではないので、母親のほうに妥当な諾否の判断基準があると考える理由がありません。

普通の意味でのインフォームド・コンセントと謂うのは、科学的裏付けのあるメリットとデメリット、深刻なリスク情報などの本質的な意味を、非専門家である相手がキチンと理解出来るように伝えると謂う意味でしょうけれど、K2レメディーについては、深刻なリスクにだけ科学的裏付けがあってメリットのほうにはない…と謂うか、科学的に否定されているわけですよね。

しかし、ホメオパスが自ら「効果は科学的に否定されているけど使いますか」なんて言うわけがないので、CXの報道じゃないですが、精々「科学的な根拠はまだわかっていない」とか「現代科学ではまだ証明されていない」とかそんな言い方をするわけで、これがすでに嘘ですよね。

その上で「英国王室がどうしたこうした」とか「自然な免疫力がどうしたこうした」と謂うような、ふんわりした何の根拠もない「メリット」を口を極めて推奨するわけですよね。で、助産師と謂う職業の傾向として、公正で中立的な説明であると謂う保証もないわけで、最初から「他の選択肢はない」ような説明であったり「説得」や「強制」のニュアンスが伴う説明である場合も多いようですね。

伝聞でしか実態を識らないのですが、助産師と謂う職業者は、「助産師が母親の意見を聞いて対応する」のではなく、「母親が助産師の指導に従う」のが当然、「私の言う通りにしていればすべて大丈夫」と謂う態度の方が多いように聞いていますので、そもそも助産師の意見は少しくらい「変だ」と思っても断れない雰囲気が濃厚なのではないかと思いますし、実際にはほぼ強制に近い形で行われているのではないかと思います。

ですから、そもそもインフォームド・コンセントの「有無」がどうこうと謂う部分が問題なのではないんですね。説明の根本が「嘘」であり、最初から有無を言わさずにレメディー使用を認めさせるような目的で「説得」「指導」されるのですから、そんな嘘の説明や指導があろうがなかろうが何の変わりもないですね。

何度も繰り返すようで恐縮ですが、この件では本質的に無意味で重大なリスクが冒されているわけで、その無意味さとリスクの重大さのアンバランスに関しては、それが母親の責任だろうが助産師の責任だろうが関係ないんです。

で、ビタミンK2投与が何故行われるのかと謂うことを普通に考えるなら、このまま当たり前のようにK2レメディーの使用を続けていれば、いつか「必ず」子供が死ぬような事態に至ると謂うのは莫迦でもわかりますよね。レメディーで代替して無事だと謂うのは「統計的に何もしなくても無事である確率のほうが高い」と謂うだけで、「無事でない確率」と謂うのが必ず一定数存在するからこそK2投与が行われるわけです。

つまり、K2投与をレメディーで代替すると謂うことは、引かなくても好い貧乏くじをわざわざ引かせるようなもので、徹底的に意味がない。もっと謂えば、もしも貧乏くじを引き当てる人が出てきて子供の死亡例が出たならば、「母親の自己責任」なんて寝言が通じるはずがないんですから、助産師の責任も当然問われるわけで、そう謂う意味では個々の助産師もまた無意味で重大なリスクを引き受け、引かなくても好い貧乏くじをわざわざ引いているようなものです。

そう謂う馬鹿げた行為が、指導的立場にある職能団体の音頭取りでトップダウンの形で推奨普及されている、こんなくだらない話があるでしょうか。まさに「自殺行為」と謂う以外に表現しようがありませんね。

>>この助産院、妊婦さん向けお教室に"ホメオパシー"はないんですけど、"マザークラス"のところに貼ってある画像にはホメオパシーと書かれています。他にマクロビもやっているみたいだし、何にも知らずに普通の助産院と思ってやってくる妊婦さんはあれやこれやと布教されちゃうと思いますね。

寧ろ助産師と謂う職域は、自分の診ている母親がホメオパシーやマクロビに類するようなアヤシゲな思想に傾倒していたら、積極的に指導して母子の安全を確保すべき立場のはずなんですが、逆にそれらのろくでもない「インチキなおまじない」をせっせと母親たちに「指導」していると謂う体たらくでは、世間から「もう助産師なんか危なくて信用出来ない」と謂われても仕方がないですね。

さらに謂えばですね、これは以前「女性校長会で水伝講演」の件でも危惧したことなのですが、もしも「助産師は危ない」と謂う風評が流布したとして、助産師と謂う職業者は「必ず」女性であり「屡々」高齢者なので、そこに「本来存在しない因果関係や一般則」を視ようとする人々が一定数現れることは必然だろうと思うんですね。

多分ネットの風評レベルでは、すでにその手の差別的な意見が出ているんじゃないかと思ったりするんですが、そのレイヤーで考えても、日本助産師会がホメオパシーを推奨し普及に努めている現状は二重三重に「傍迷惑」で、「人命の損失」と謂う最悪の結果がもたらされたこの件ですら心底懲りて綱紀粛正を果たせないくらいなら、いっそ社会から職域ごと排除されてしまえと思ったりするわけです。

いいよもう、消えてなくなっても、と、そのくらい思います。

ちょっと大風呂敷な暴論を吐きますとですね、母性本能なんてものが本当にあって女は子供を産んだら誰でも自動的に母親になるんだと思っているおめでたい人も世の中にはたくさんいるんでしょうけれど、人間みたいに本能が毀れた生き物の雌が自動的に母親になれるはずがないんであって、子供にしてからが他の動物に比べれば未成熟な状態で母胎から出てきて、四六時中付きっきりで散々手を掛けてやらなければ育たないんですから、母親だって本能だけで賄いきれないところは知恵や情報の伝達で補っていかなければならないわけです。

そのようにして、本能的な部分を超えた「人間の母親と謂う役割」に情報や知恵の伝達と謂う「教育」によって作られる部分があるのなら、その情報や知恵を伝達する立場に在る者はどんな母親だって「作り出す」ことが出来るわけで、shofさんが「親が取り込まれる入り口が出産だと、延々と子供に医療ネグレクトの災いが降りかかる可能性もあり」と仰っているように、ホメオパスの助産師たちがどんな母親を「作り出して」きたのかを考えると暗澹とします。

一般論として、ホメオパシーやマクロビにハマる人は元々そう謂う思想に対する親和性が高い部分はあると思うんですが、助産院を拠点として流布されるニセ科学情報の罪深いところと謂うのは、それが助産師の施す「母親教育」によって刷り込まれてしまうと謂う部分で、謂わば一般的に女性が最も立場の弱い局面において、職業的権威によってその弱みに付け込むと謂う卑劣な性格があるわけですね。

助産師と謂う職業に期待されている職能とは、母親としての経験則や一般則を新米の母親に伝えていくと謂う教育機能の比重が大きいわけで、旧くは産婆さんとか取り上げ婆と呼ばれていた「高齢の女性」である意味もそこにあるのだと思うのですが、妊娠出産と謂う女性の秘か事にコミットする専門家であり、数多くの出産や育児の事例を経験してきた知恵の蓄積に基づく「職業的権威」を以て新米の母親を「教育」し「作り出す」機能があるわけですね。前述のように、助産師に高圧的だったり強権的な態度の人が多いのは、この職業的権威と教育機能に基づいているわけです。

その「職業的権威」に基づく「教育」にホメだのマクロビだのと謂う「インチキ」を混ぜられても、基本的に一般人の女性には抵抗が困難ですよね。ただでさえ母親になりたての頃は通常の状況よりも不安定な心理状況にあるわけですから、そこに権威を振り翳した専門家が強権的に「教育」を施せば幾らでも簡単に折伏されてしまうわけです。

ですから、感情的には「消えてなくなれ」くらいの気持ちはありますが、やはりそう謂う専門的な教育機能は祖母の世代の近親者だけに頼るわけにも行かないですから、専門の職業者は必要なはずですし、現代社会の傾向から考えてその必要性は以前に増して高いはずなのですね。そのはずであるにも関わらず、助産院が付加価値商売のホメだのマクロビだのにうつつを抜かしてアヤシゲなニセ科学の温床と化している現状は剰りにも迷走が非道すぎて、何だか無闇に困ってしまいますね。

投稿: 黒猫亭 | 2010年8月11日 (水曜日) 午後 12時58分

助産院は危険です。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/09/images/s0905-7f1.gif

50年前、分娩場所が助産所や自宅から、病院や産婦人科医院(診療所)に代わり、母体死亡率が激減してます。

半世紀前に戻るのか????

投稿: 九州の女性医師 | 2010年8月11日 (水曜日) 午後 11時00分

>九州の女性医師さん

>>50年前、分娩場所が助産所や自宅から、病院や産婦人科医院(診療所)に代わり、母体死亡率が激減してます。

たしかにご紹介戴いたグラフからはそう読み取れますし、URLから判断する限り信頼出来るデータだとは思いますが、出来ればどのような文脈で出てきた資料であるかもお書き添え戴いたほうが誤解がないかと思います。

とは言え、データの信頼性自体には問題ないでしょうから、その前提で考えますと、産婦人科医療が救済してきたのは、新生児の命と謂うより、まず第一に妊産婦の安全だったと謂うことですね。こちらでも何度も繰り返し強調していることなんですが、ほんの五〇年前までは、妊娠出産は命の危険を伴うのが当たり前だったわけで、「女の身体は子供を産むように出来ているんだから、自然に任せれば大丈夫」なんてことは決してないわけですよね。

上のほうでshofさんが「なす術も無く出血で亡くなっていく赤ちゃんを助けるために、どれだけのヒトがどれだけの努力を重ねたと思ってるんだ」と仰っていることは、母親についても当てはまるわけで、普通に安全に出産出来ることが「当たり前」になったのはつい最近のことでしかないわけですね。

ただ、五〇年前の状況では、母体や胎児の状況が悪い場合でも助産院や自宅で出産するのが普通だったわけで、それ故に母体死亡率が高かったわけですが、現在はマトモな手続を踏んでさえいれば、正常分娩以外は助産院や自宅での出産は行われない「はず」ですので、五〇年前の水準に戻るようなことはないと思います。

そのような助産院と産婦人科の棲み分けも含めて、医療のシステム自体が母体や子供の安全を包括的に確保するように進歩しているのだと思います。ですから、そのレベルで安全性に問題があると謂うわけでもないでしょうね。

問題なのは、そのような安全を確保する現代医療の仕組みを妥当な理由もなく忌避する姿勢であって、poohさんのところのエントリを拝見すると、日本助産師会の幹部の一人が「K2シロップ投与は法律で義務附けられていないからレメディーで代替しても問題ない」と息巻いたような話がありましたが、そこまで形骸的な考え方をされると安全性確保に対する意識自体を疑わざるを得ないと謂う話なんですよね。

で、根本的な問題は「助産師と謂う歴とした国家資格の医療技術者が、ホメオパシーに効果があると本当に信じているのか」と謂う部分だと思います。助産師だって自然科学によって安全性を担保された現代医療のシステム内の職域のはずなのに、自然科学の基準では完全に効果も原理も否定されていて、現代医療とは原理的に相互排除的な関係にあるはずのホメオパシーに効果があると本当に信じているのであれば、それは医療否定と同じことじゃないですか。

そもそも代替医療施術者でしかない一般的なホメオパスがホメオパシーの効果を確信しているのは一種当たり前ですし、また、ホメオパシー以外の代替医療施術者がホメオパシーに接近すると謂うのも理解の範囲内ではあります。

しかし、正規の医療技術者である助産師がホメオパシーの効果を確信していると謂うのであれば、それは現代医療の埒内の職業者が現代医療自体を否定すると謂う意味になりますから、大きな信用問題になります。

つまり、多くの助産師がホメオパシーを本当に確信しているのであれば、その人たちは本質的には現代医療なんか信用していないと謂うことになりますので、現代医療の規定上マトモな安全確保の手続を踏むだろうと謂う信頼性が著しく損なわれるわけですね。今回問題になった山口の事件などは、その信頼性失墜を事実によって裏付ける傍証となり得るから大問題なわけです。

山口の事件について、インフォームド・コンセントの手続を踏まなかったことが本質的な問題ではないとオレが考えるのは、本当にホメオパシーを信じていなければ母親に無断でレメディーで代替し虚偽の記載をするようなことはないはず(単なる商売の方便なら、母親が識らないのでは意味がないですから)だからで、この助産師は本心から現代医療を信頼していないのだし、それを理由として相手に嘘を吐いたり法律で規定されている手続すら無視しているからです。

ホメオパシーが現代医療と原理的に相互排除的な関係にある以上、こう謂う事態が必ず起こるはずなんですね。ホメオパシーサイドで「現代医療と共存する」みたいな口前の好いことを言っていても、現代医療の拠って立つ基盤である自然科学はホメオパシーの効果を否定しているわけですから共存の余地なんかないはずで、謂わば「勝手に共存なんか提案されても迷惑だ」とか「どこでどう折り合いを附けたら共存出来るんだ」みたいな話ではあります(笑)。

現代医療に効果があるのであればホメオパシーには効果などないのだし、逆にホメオパシーに効果があるのであれば現代医療には効果がないと謂うことになる、必ずこのどちらかでなければならないはずですから、正規の医療技術者がホメオパスでもあるなんてことは本来は絶対ないはずなんですね。

ですから、ホメオパスでもある助産師は基本的に医療技術者として信用出来ない、そう謂うことになるかと思います。まあ、ホメオパシーを信じてもいないのに商売の方便だと考えて採り入れているような助産師もいるんでしょうけれど、それはもう職業倫理の問題になりますから、別立てで考慮する必要すらないでしょう。それは単なる浅はかな悪質業者と謂うだけの話です。

投稿: 黒猫亭 | 2010年8月13日 (金曜日) 午前 04時22分

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