あんまり本人乗り気じゃなかったのでは
山梨で甲羅に「カメデス」と落書きされた亀が見附かって、落書きを消す方針で県職員が保護しようとしていたのが、昨日警察官に保護されたそうな。結局無理に消さずに脱皮を待つことになり、県の水産技術センターに送られたそうだが、何だかこの話を聞いてかなり微妙な気分になった。
たしかに生き物に落書きをすると謂うのは、人間の倫理観では許し難い悪戯に感じられるのだが、たとえばこれが鳥や獣の場合なら、仲間から排斥されたり天敵に見附かりやすくなるとか獲物を捕らえにくくなると謂うような問題が考えられるが、亀の甲羅の落書きと謂うのは、多分当の亀にとっては何ら実害はないだろう。
まあ、オレは亀の生態に詳しくないから、思わぬ問題が生じる可能性もないではないだろうが、多分公園のお堀に住んでいる亀なんだから、甲羅の落書きが目立ってもそんなに実害はないのではないかと思う。
おそらく、当人視点における虐待に類する行為と謂うのは、人間に捕まってペンキで文字を書かれた際に不快を感じたくらいで、その後はいつも通り普通に暮らしていたのではないかと思う。これを再び人間が捕まえて落書きを消すと謂うのは、亀視点では落書きされた際と同じくらい不快だったりストレスがあったりするんではないかと謂う気がするし、脱皮すれば自然に消える可能性が高いと謂うのであれば、放置しておいても結果は変わらないと謂う言い方も出来る。
それをわざわざ捕獲して水産技術センターで保護することに、亀視点ではあんまり積極的な意義はなかったんじゃないかなんて思うのだが、どうだろうか。まあ、相手は爬虫類のことだから、公園のお堀でも水産技術センターでもそんなに気にしないとは思うのだが(笑)、亀視点においては一連の人間の努力は別段自身にとって何の意味も持たないような気がする。
おそらくこの一件は飽くまで人間視点における動物愛護の倫理の問題であって、当の亀にしてみれば大騒ぎせず抛っておいてくれたほうが面倒がなかったんじゃないか、なんて感じてしまうわけである。
動物愛護の倫理自体は当然間違ってはいないのだが、この場合は偶々人間が動物に対して行った「没義道」が動物自身にほぼ全く被害を及ぼさず、従ってその非道に憤った人間による「救済行動」も動物自身に何ら益するところがない、と謂う不可思議な状況が現出したわけである。
勿論、落書きをした犯人は相応の責任を取るべきだと思うし、亀の場合は問題がないと仮定しても、前述の通り相手が亀ではなく野生の哺乳類や鳥類だったとしたら相当の実害を被っただろうから、「これに類する行為」の再発を防ぐ努力も必要だろうと思う。しかし、今回の場合、たまたま相手が亀で、甲羅に落書きがあろうがなかろうがほぼ日常生活に何の影響もなさそうだったので、何とも微妙な気分になったわけである。
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